シンポジウム「食料基地北海道を支える物流の役割」 

北海道農業経済学会、北海商科大学、北海道運輸交通研究センターは10月6日、北海商科大学で「食料基地北海道を支える物流の役割」と題するシンポジウムを開催した。
札ト協、日本物流学会北海道支部、北海道、北海道物流を支える鉄道輸送の会(北海道通運業連盟、北海道通運業連合会、鉄道貨物協会北海道支部)が後援した。
 
同学会の阿部秀明会長(北海商科大学)は、シンポジウムの座長として「北海道の農業と物流は相互依存関係にある。当学会は設立から67年が経つが、これまで物流の知見について十分に議論をされてこなかった向きがある」と述べ、「道産の農作物・加工品の出荷量約800万㌧のうち、45%が道外に向かい、輸送手段はフェリーが55%、鉄道が25%、内航輸送が20%となっている。JR北海道の営業区間見直し、青函共用走行問題、船舶燃料SOx規制、トラック運転手不足・長時間労働の問題など昨今出てきた課題により、北海道の農畜産・食品加工品の輸送力低下や輸送コストアップが起きる可能性がある。こういった場合に何が起きるのか、物流の現状と課題について広く周知したい」と問題提起した。

相浦宣徳氏(北海商科大学)は、「JR北海道の営業区間見直しが進むと、これまで鉄道で運んでいた農産品を全てトラックで代替することは難しく、また、輸送コストやリードタイムが変更され、他地域産品との競争に勝てなくなる可能性がある」と述べたほか、トラック輸送の生産性向上に向けて「物流事業者だけの問題と捉えるのではなく、荷主も手待ち時間の削減、荷役作業の効率化などは自らの経営課題になると考え、荷主側からパレット化の推進、出荷・納品時刻の調整などアクションを起こしてほしい」と強調。
物流に対してなんら手立てを打たなければ、「北海道の農産品が『運びたくても運べない』『運んでも相当の対価が得られない』『運んだところで見向きされない』という危機に晒されるかもしれない。北海道の農産品が物流にとって『選ばれる荷物』であり、農業分野が『選ばれる荷主』であり、北海道が『選ばれる地域』であるために、物流への対応を広く考えてほしい」と訴えた。
 

このほか、児玉卓哉氏(ホクレン)は、一貫パレチゼーション輸送や、帰り荷確保のため他メーカーとの往復輸送、本州での中継輸送、青果物混載輸送、船舶代行体制の強化といった取り組みを紹介。
河田大輔氏(JA きたみらい)は、選果・麦乾燥貯蔵施設の集約化、運送会社と連携した集荷・選果作業委託、ダンボール仕入れの鉄路輸送などの物流効率化の取り組みを紹介し、「物流コスト負担のあり方を、生産者と物流事業者だけではなく、国民的議論に発展させてほしい」と訴えた。
永吉大介氏(富良野通運)は、根室本線貨物列車が廃止された場合、地場産品の競争力低下や地域経済に大きなダメージが発生する可能性を示した。
 
講演後に行われたパネルディスカッションでは、パレット化や貨客混載などの有効性について議論されたほか、「効率的な輸送のため、空車情報が必要となる。これを関係者が共有できる仕組みが必要」といった問題提起がなされた。

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