道経連「道内卸売市場の在り方と今後の方向性について」取りまとめ

北海道経済連合会は7月6日、道内外の卸売市場の現状や取り巻く環境・課題を整理し、今後のあり方等について提言する調査報告書「道内卸売市場の在り方と今後の方向性について」を取りまとめたと発表。主な内容は以下の通り。

2020年3月現在、道内には73の卸売市場があり、うち自治体が開設者である公設が14(札幌市中央卸売市場を含む)、民間企業が開設者である民設が58、第3セクターが開設者の市場が1(札幌花き地方卸売市場)。市場機能別に区分すると、中央卸売市場が1、消費地市場が32、水産物産地市場が40。この総数は年々減少し、この10年間で7市場が閉鎖されている。

地方卸売市場の減少に伴い、地方卸売市場における卸売業者数も2010年の87業者から2019年には81業者へ減少、札幌市中央卸売市場でも青果部の卸売業者は1社となっている。仲卸業者は卸売業者よりも減少が進み、地方卸売市場で87業者から59業者へ、札幌市中央卸売市場で水産物部が32業者から28業者へ、青果部で28業者から25業者へと減少。この主な要因は、取扱高の減少による経営悪化によるものと推測、道内卸売市場の取扱高(金額)は、1990 年をピークに年々減少の傾向にある。

道内卸売市場の課題として、経営体力の低下に加え、総じて施設の老朽化が進み、多額の投資が必要となる閉鎖型施設の導入を通じたコールドチェーン化は道内卸売市場においては進んでいないことを挙げ、また、加工・小分け機能の付加や、輸出を通じた海外需要の取り込みといった、新たな取り組みへの対応が一部の卸売市場・事業者を除いて進んでいないとした。

このほか、小規模な卸売市場ほど産地から荷を引くことが困難になり、道外各産地からの出荷が年々停止されてきているとの声があったほか、産地・卸売市場間における物流も課題とし、「産地からの農水産物のトラック輸送については、段ボール等を手積みで荷台スペースに直積みするのが一般的となっており、卸売市場での荷下ろしの際にも人手による作業が必要となっている。北海道農産物の道外への移出時におけるパレットの使用率は約10%にとどまっているとのデータもある」と指摘、道内卸売市場への輸送時においてもパレット化が進んでいないことが明らとなったとしている。
また、産地においてパレットが使用されても、市場内で使用するパレットサイズが産地のものと異なるため、別のパレットに積み替える作業が発生する場合もあり、結果、荷下ろしに時間がかかることによって、トラックドライバーの拘束時間も延びるほか、入荷するトラックに待ち時間が発生したり、正規の屋根付きの荷下ろし場ではなく、衛生管理上問題のある屋根の付いていない場所での荷下ろしが行われるなどの弊害も発生しているとし、「パレット化や入荷時間の平準化など、物流の効率化を進めていかなければ、卸売市場にとっては安定的に集荷を確保できないリスクが高まる」としている。

今後の在り方と取組の方向性について、物流面では主に次の点を挙げている。

「コールドチェーンの確立」
閉鎖型施設の導入を通じたコールドチェーンの実現により、消費地市場としても産地市場としても鮮度保持を産地へアピールできることで集荷力が向上、また、鮮度の高い品を供給できるようになることで、小売等への販売力が強化されることから、道内卸売市場においても、その実現に取り組むことが望まれる。

「集荷力アップ」
北海道内に多様な品を安定的に流通させるためには、道内卸売市場が連携して集荷先を集約化する「共同集荷」が考えられる。出荷先を集約することで産地側が望む安定した取引量と取引価格を実現することが可能となり、同時に輸送先の一元化や大ロット化により出荷元(産地側)の輸送コスト低減にもつながる。これにより、これまで仕入れることのできなかった産地の商品を調達することが可能となり、多種多様な品揃えが維持・拡大され、最終的には販売力の強化につながる。

「AIやIoTを活用した物流の効率化」
物流費が上昇し、トラックドライバーが減少するなか、物流の効率化を図るため、パレットを使用したサプライチェーンの構築を実現すべき。同時に、個々のパレットについてインターネット等を通じた情報管理が可能となるRFIDタグを装着したパレットを使用することにより、パレット管理の効率化やトレーサビリティの確保を図っていくべき。
実現のためには、産地や運送業者の理解・協力が必要不可欠であり、空パレットの回収や費用負担の問題、産地側における混載や選果場設備の改修、段ボールサイズの変更などの課題について、道内市場が連携して調整を図っていくべきである。卸売市場においても使用するパレットの規格を統一することや、パレットの差替に必要なクランプフォークリフトの導入を推進していく必要がある。
また、トラックの市場内での待ち時間の解消については、ICTやAIを用いて配車・到着時間の最適化を図るなどの取り組みが考えられる。さらに、中継貨物の荷下ろしや積み替えをする場所の確保についても、利用者の費用負担等の課題は考えられるものの、物流の効率化のためにはその整備が有効である。
これら物流の効率化には、一事業者による実現は困難であり、行政による後押し、特に初期投資に係る補助等の支援を通じて、その取組の加速が望まれる。

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