トラック適正化二法について ある運輸行政職員の受け止め

「議員立法による法律なので、私どもから話すのが難しい」。ある運輸行政の担当官は、トラック適正化二法についてそう話す。慎重な姿勢を見せつつ、「読めば読むほどよくできている。しかし…」と個人的な受け止めを語る。

同法は、トラックドライバーの適切な賃金の確保とトラック運送業界の質向上などを目的として6月に成立。「事業許可の5年ごとの更新」や「適正原価を下回る運賃・料金の制限」「委託次数の制限」「違法な白トラに係る荷主などの取り締まり」、そして、これらの実効性を担保する「組織(独立行政法人)や財源などの体制整備」などを内容としている。今後、それぞれ具体的な内容が固まっていくが、現状でははっきりしていない部分が多い。

【事業許可更新制に懸念】

事業許可更新制度は、「法令の規定を順守して事業を遂行することが見込まれる」が許可基準に新たに追加され、輸送の安全確保、社会保険料の納付、適正原価の収受などがその要件になるとされている。また、更新申請時には「一定の手数料」の発生を想定。

同氏はこれらについて「コンプラを意識して経営している運送事業者でも、法令の理解が追いつかずに行政処分を受け、また、事故を起こすこともある。真面目に事業を行っていても、更新の基準に合致しないというケースが出るかもしれない」とし、加えて、「事業者の義務として『労働者の適切な処遇の確保のために必要な措置を実施する』ことが定められ、ドライバーの賃金や処遇改善が更新の要件に含まれることになりそうだ。十分な賃金アップが行われないなかでこの話が進むと、事業者への締め付けとなってしまう。例えば、ドライバーから『賃金が不十分』と内部告発があれば、確認に入らざるを得ない。これを端緒として許可更新ができなくなるということもあり得る」と懸念を示す。また、更新手数料も事業者への負担になってしまう」と捉えている。

【適正原価は委託次数制限に寄与】

一部事業者からの期待も大きい「適正原価」は、「事業許可の有効期間の5年間を通じた総運行距離や総労働時間などを勘案し、出来る限り簡便で客観的に判断しうる判定基準を設定する」ことが想定されているとし、これについて「金額の設定にあたり運輸審議会への諮問を経ることになるので、公共性の高いものになるのでは。また、実運送事業者が収受できるようにするには、自ずと委託の次数制限が進むのではないか」との認識を語る。

【委託次数の制限は影響が大きい】

委託次数の制限については、「努力義務ではあるが、これを徹底するとどのような影響が出るのか予想できない。相当な影響が出るのでは」と危惧している。

【白トラ取り締まりは画期的】

違法な白トラに係る荷主などへの取り締まりについては「画期的な内容」と評価。「現在は運送した側が処罰対象で、荷主側は『幇助犯・共同正犯などの共犯関係を立証できた場合』には処罰の対象となったが、立証が難しいのが実情だった。今後は荷主側が違法白トラと認識して発注しただけで違法となり得る。また、荷主に対し、トラック・物流Gメンが是正指導を行え、違法白トラに関わっているおそれがあると認められるだけでも要請ができるため、抑止効果も大きい」と話す。

【よく出来ているが…】

同法のポイントについて個人的な見解を述べたうえで、同氏は「私が現状で理解している内容からは、よく出来ている法律だとは思う。しかし、全部がうまく噛み合わなければ、トラック事業者に大きな皺寄せがいく面もある。真面目に事業を行なっていても、どこかのポイントで許可更新の基準に抵触してしまうこともあるかもしれない。悪貨だけが駆逐され、しっかりした事業者が報われるよう、これから中身をつくっていく必要がある」と語った。

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