札ト協は損害保険ジャパン日本興亜と共催で3月7日、札幌サンプラザで「経営強化セミナー」を開催、日通総研の大島弘明取締役が「トラックドライバー不足と働き方改革〜現場の見える化による労働時間短縮」と題して講演を行った。
大島氏は「全国的なトラックドライバー不足の要因は、長時間労働で賃金が安いこと」と言及。「30年以上も前から『一貫パレチゼーション』という言葉はあるが、ほとんど進んでおらず、未だに1000ケースを手積み手降ろしするような現場が多い。労働人口が減る中、そのような労働環境に人が来ないのは自明の理。労働人口が取り合いになる中、トラックドライバーが選んでもらえなくなっている」と述べた。
また、ドライバー不足に至った経緯について「貨物輸送量が伸びない中、規制緩和により事業者数が増えたほか、法令遵守が求められるようになり、『下請け構造の多様化』と『運賃の低廉化』が進んだ。このしわ寄せが下請け事業者やドライバーに行った」と説明。
しかし近年、「輸送力不足による企業活動・経済成長への影響」が広く危惧されているため、「運送事業者が荷主を選べる環境」へと変わってきているとし、「運送事業者はデータを示し、ドライバーの賃金アップや労働時間削減などに向けて、主張すべきことを主張すべき時に来ている。荷主は聞く耳を持ち始めており、国による物流支援に向けた各種施策も手厚く打ち出されている。運送事業者には追い風が吹いている状況」と強調した。
物流業界で労働力を確保するには、「働き方改革による他産業並みの労働条件の実現」と「機械化・システム化等による生産性向上につながる仕組みづくり」が重要になると説明。
その実現のためには「運送事業者と荷主の双方でドライバーの労働条件改善の問題意識を共有し、検討の場を設けるとともに、手待ち時間を含む労働時間の実態を把握すること」が重要であり、これにより「長時間労働の原因を把握し、運送事業者と荷主の双方で、業務内容の改善に取り組む事が必要」と強調。その上で「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」の内容について説明を行った。
このほか、改正された貨物自動車運送事業法について説明し、「標準運賃の告示制度の具体的な中身は、2019年度中に決まることは難しく、2020年度中になるのではないか」との見通しを示した。