三菱商事(垣内威彦社長、東京都千代田区)とエア・ウォーター(豊田喜久夫会長・CEO、大阪市中央区)は10月27日、大型LNGトラック向けに、限られたスペースに設置可能な小型LNG充填設備を共同開発し、北海道で実証実験を行うと発表した。
同設備は、大型トラック1台分の駐車スペース(3.3m×12.0m)に収まり、費用は従来型LNG充填所の2分の1以下、燃料充填時間は軽油と同等以下の1回あたり10分未満、最大で1日60台以上の連続充填が可能となる予定。
日本で初めての可搬型の充填設備で、停電時にもトラックへのLNG充填が可能となる自家発電設備を搭載した世界初のシステム。加えて、排熱回収温水を循環利用することで、寒冷地や湿度が高い地域における氷結トラブルを回避することが可能となる。
両社は同設備の商用化に向けて、いすゞ自動車の大型LNGトラック1台と、イタリア製の大型LNGトラック2台を用いて、11月より北海道での実証試験を開始する。
北海道電力の協力を得て、同設備の有効性および大型LNGトラック実走行時におけるCO2排出量と燃料費の削減効果を確認の上、事業化の検討を行っていく。
日本では現状、大型LNGトラックが商用化されておらず、大型トラックの大半は、ディーゼルを燃料とし(約50万台)、CO2排出量の削減が求められている。
大型LNGトラックは、電気自動車や燃料電池車では達成が難しい1000㎞以上の長距離走行が可能となり、従来の大型軽油トラックに比べて10 %程度以上のCO2排出量削減が期待できる。加えて、将来的にCO2フリーのLNGを使用するなど、CO2の更なる削減策についても検討していく。
同設備の商用化にあたり、三菱商事の1969年以降幅広く展開しているLNG事業およびその他の事業ポートフォリオの知見と、エア・ウォーターのLNGタンクローリーやサテライト供給設備などのLNG関連の開発・製造技術や物流ネットワークを有効的に活用する。
同事業は環境負荷の低いクリーンなエネルギーへの転換の取組みの一つであり、両社は低・脱炭素社会の実現に向けて、2020年代半ばを目標に同設備の設置と競争力ある自動車用LNG供給を全国展開していくことを構想している。