北ト協と札ト協は12月13日、京王プラザホテル札幌で「適正な運賃収受等」に係る討論会をオンライン併用で開催した。運賃交渉の方法や状況、2024年問題への対応などについて会員事業者が登壇し、取り組み状況や課題などを報告。初めて試みで、次年度以降の開催も計画している。
北海道物流開発の斉藤博之会長がコーディネーターとなり、北商建設運輸の市原正基社長、太陽運輸の太田豊子社長、ジャスト・カーゴの清野敏彦社長、東北陸運の村上実常務の4人がパネラーとして登壇した。
適正運賃の収受やドライバーの労働時間削減に向けた取り組みの現状と課題について、市原社長は「車両毎に収支計算を行い、標準的な運賃と比較し運賃が70%を割っている仕事は順次荷主と交渉を進め、待機時間や大雪時の雪下ろし作業時の料金についても交渉している。また、荷主の協力の下、24時間荷物の引き取りが可能なモータープールを複数箇所設置した。2024年度に向けて、運賃交渉をもう一段進め、加えて、時間指定の緩和や手待ち待ち時間のない業務体制を構築したい」と述べた。
太田社長はドライバーの残業時間の削減に焦点を当てた取り組みを紹介、「標準的な運賃に近づけていくことに加え、法令を順守した労働時間を徹底する方針を決め、社内に繰り返し伝えた。全ての仕事を検証し、労働時間が長く、荷主側に問題があると判断した仕事があれば、すぐに交渉した。管理者だけではなく、ドライバーにも『どれだけ残業をしたか』『あと何時間残業できるか』を把握してもらうようにした。ドライバーが『今月はあとこれだけしか働けない』と言える会社にしたい」と述べた。
清野社長は「これまで配車係は仕事を捌くことを優先し、原価やコストの意識が低かったため、現状と2024年度の適正運賃をそれぞれ算出した。原価計算し、収支を確認し、コスト意識を高めることから始めている」と説明。また、「ドライバーの所得向上のために運賃の改善はしなければならず、荷主との今後の折衝にかかってくる。交渉も一回二回では進まないが、手待ち時間や手積み手降ろしの削減、時間指定をなくすなど業務改善のお願いを含め、根気強く交渉を続けていくしかない」と述べた。
村上常務は「標準的運賃などの資料を出して交渉をすると、『値上げの話が来たら、会社を畳もうと思っていた』と応じる厳しい状況の荷主もある。適正な運賃を求めたいが、やめられてしまうと元も子もない。相手のニーズをくみ取り、すぐに十分な対案を提示できれば、交渉の風向きが変わることもあるため、いくつか対応案を準備して荷主と交渉することを重視している。実際に荷主の販路拡大の手伝いをすることで、値上げに対して理解をしてもらうこともあった」と語った。
コーディネーターを務めた斉藤会長は「時間管理を可視化させる必要性が多く提起された。また、運賃値上げ交渉だけではなく、業務効率化の提案の必要性も提起された。効率的な作業方法や時間管理について、一番現場を知っている我々運送事業者が提案を行える可能性は十分にある。日々の仕事を可視化し、効率化に向けた提案を荷主に対して伝えることを目指すべき。北海道では人口減少が進み、コスト面から『遠くにモノを運ぶな』という荷主の動きも出ている。物流に関して、競争・協調・共有の領域を意識し、協調や共有できる部分はないか検討していくことが重要ではないか」と取りまとめた。
このほか、北海道大学公共政策大学院の石井吉春客員教授が「北海道の物流の課題」をテーマに基調講演を行なった。
「北海道の物流は、道内からの発荷物より着荷物の方が多く片荷構造であることに加え、発荷物は農水産品が多いため季節波動が大きい。農水産品の出荷ピーク時の輸送量は、平均の2倍以上にのぼり、こうしたピークを抑え、平準化する取り組みが長く行われてこなかったことも特徴。ピーク時は運んだ農産品も安価に販売され、北海道経済全体にマイナスの影響があった」と指摘し、「とりわけ鉄道貨物輸送は、安定性のある安価なモードとして活用されてきたが、農産品の輸送に対しては、季節繁閑を受け入れたために設備の活用の効率が悪かった。平準化に向けて、荷主である農水産業界の努力が不可欠。ピークカットと物流の平準化を進めれば、移出する商品単価の上昇も一定程度見込める。北海道経済全体の適切な発展のために、道外に移出する物流の平準化に向けて、構造変換を行う必要がある」と訴えた。