北海道の運輸交通施策の総合的な促進を図るために設置された知事の諮問機関である北海道運輸交通審議会が10月31日、札幌グランドホテルで開催され、北海道交通政策総合指針に関する取り組み状況が報告されたほか、運輸・交通事業者らによる意見交換が行われた。
委員が改選されてから初の開催となり、委員長に北海道大学大学院工学研究院の岸邦宏教授、副委員長に同大学大学院法学研究科・法学部の村上裕一准教授が選任された。
岸委員長は「当審議会の副委員長を11年間務め、北海道交通政策総合指針の策定をはじめ、この10年間は北海道の将来の交通・運輸の体系を考えるために議論を重ねてきた。交通・運輸業界は人材不足や北海道新幹線の札幌延伸に伴う諸課題への対応などに直面しており、これからの10年間も非常に重要な期間。厳しい状況だが、関係各位が一堂に会して意見交換を行い、北海道の交通・運輸のため前向きな議論を行なっていきたい」と述べた。
意見交換では、北ト協の野村佳史理事(丸日日諸産業)は、「2024年問題により、物流は今後大きく変わる。人材不足が大きな課題の一つ。労働時間を短縮しても給料を維持することが必要で、運賃の値上げ交渉が重要となる。また、人材確保に向けてドライバーや運行管理者、整備管理者などを養成する学校の設立が必要と考えている」と指摘。このほか、「燃料高騰に対して、北海道を始め各自治体からの支援の継続をお願いしたい。また、本州から北海道への輸送や、道内地方部からの一次産品の輸送は片荷が多い。季節波動を抑えるための保管施設の整備や、運賃のアップをお願いしたい。札ト協会員1100社のうち、車両10台以下の会員は43%、30台以下の会員は80%であり、多重下請けが多いこの業界では、運賃値上げの影響が中小事業者まで届きにくい。2024年問題に対応できずに廃業や再編が進むと考えている」と述べた。
このほか、全日空の田部敏之札幌支店長は「北海道では人口減少と広域性をどう克服するかが課題。限られた需要を奪い合うのではなく、需要が増えるよう連携することが重要。民間事業者のみでの連携が難しい場合、行政や各種団体が間に入ることで、上手くいくケースもある。北海道が抱える課題は、将来的に日本全国が直面することであり、特区の活用など、北海道として何かできないか考えていきたい」と話し、北海道バス協会の出口治康理事は「北海道のバス業界では、ドライバー不足により、路線の縮小、減便、廃止が続いている。コロナ禍の影響により、令和2〜4年の3年間で約770億円の減収となり、事業者の財務基盤は著しく毀損している。運輸局により10月から各バス会社の上限運賃変更の認可が行われているが、ドライバーの処遇改善に反映されるまではしばらく時間がかかる」と報告した。