高校生対象「物流体験会」第2部  運送事業者4人が講和

北海道運輸局は札ト協と協力して10月22日、札幌国際情報高校のグローバルビジネス科1年生120人を対象とした「物流体験会」の第2部を開催、物流事業者4人による講和を行なった。
併せて、道央の主要物流拠点である石狩湾新港エリアで花畔埠頭、エースと東洋水産の物流センターの見学を実施した。

 
講和は、工藤商事(夕張郡)の工藤英人社長が「北海道の強みとそれを支える物流」、幸楽輸送(札幌市清田区)の不動直樹社長が「物流の最適化」、ジャスト・カーゴ(石狩市)の清野敏彦社長が「情報制御の重要性」、北海道物流開発(札幌市西区)の斉藤博之会長が「将来の物流効率化の考え方」と題し、それぞれ1時間にわたって行なった。

工藤社長は、地元農産物の九州までの輸送業務(集荷から、農協施設での取り下ろし・洗浄・選果・梱包・港湾までの輸送)を紹介。「必要なモノを、必要な時に、必要な量で、必要な場所へ届けるといった物流業務を管理することがロジスティクス」と説明し、効率的なロジスティクスには「箱や輸送機器など運ぶ荷物のサイズを統一するモジュール化」と「どこに何がどれだけ必要か、ということを正確に伝達する情報化」をより進めることが重要と述べた。このためには、荷主の理解と協力が必要だと強調した。
また、北海道のロジスティクスに貢献できるアイデアについて自由に議論してもらい、生徒から「空中に張り巡らせたパイプ・高速道路による輸送」「荷物を縮小させるテクノロジーの開発」「輸送機器上で農産物を育て、収穫せずそのまま店舗まで輸送」「輸送中にトラックの荷台で流通加工」「輸送用の横向きエレベーターの実装」といった提案があった。

不動社長は、「物流は、衣食住に必要なモノの輸送・保管に太古から常に関わってきており、必要不可欠なインフラ。どのような社会活動・経済活動においても、結果として物流が発生する」と説明。
また、北海道のトラックは「実車率の平均が約60%、積載率の平均も約60%、従って稼働しているトラックの36%程度しか有効に活用できていない計算。どのようにしたら満載に積んで走れるか、ここにチャンスがある」と述べ、「物流は、荷主や運送事業者などそれぞれの主体が自身の都合による部分最適を求め、全体最適を見つけることが難しい。社会活動の中でも、最適化のニーズ・効果とも一番大きいのが物流・ロジスティクス・SCMの分野。物流の最適化は全世界の夢である」と話した。
  
清野社長は、ハウスメーカーの情報とモノの流れを制御する専用システムを紹介し、資材発注から施工、廃棄物処理に至るまでの住宅に関する一連の工程を説明。「戸建て住宅を作るには、物凄い種類・個数の資材が納期に沿って動く。販売価格は基本的に全国一律だが、資材の出荷拠点から離れている北海道は物流コストが割高になる。今後、物流コストの面から、北海道の販売価格が割高になる可能性もある」と指摘した。
また、コロナ禍でも物流事業者がモノを運び続けてきたことを紹介し、「マスクが不足している時期などは納入に苦労したこともあったが、物流が動かなければ、モノが買いたくても買えない社会となる。ドライバーが不足すると、こういうことが実際に起きる可能性もある」と述べた。

斉藤会長は、北海道の人口減少・経済規模縮小や、ドライバーの労働条件が厳しくなることに伴って、「運ぶ機能の減少→物流単価の高騰→商品価格の上昇→競争力の低下→輸送量の減少→更なる輸送機能の減少」といった負のスパイラルに陥り、必要なモノを運べなくなる「物流クライシス」に直面しつつあると指摘。こういった状況を解消に向けて、「地域共同配送」や「物流のDX化」に取り組んでいることを説明。
具体的には「大型店舗に通過型物流センターの機能を持たせ、これら拠点間をミルクランでつなぐ」「軽量コンテナやコールドロールボックスなどモジュール・ボックス・ユニット(MBU)の運用」、「サプライチェーンに関する情報を一元管理するロジスティクス・リザーベーション・センター(LRC)の運用」「画像認識聞きを活用した労働管理・受発注の効率化」といった構想を示し、それぞれ社会実装に向けて取り組みを進めていると紹介した。

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