日本気象協会、北海道道路管理技術センター、北海道開発技術センターは10月31日、ホテルポールスター札幌で「気象状況に応じた北海道の効率的な物流体系の確保に向けて」と題したシンポジウムを開催した。
気象状況に応じた適切かつ効率的な物流の確保についてのパネルディスカッションが行われ、小売大手ラルズの松尾直人専務、北海道物流開発の斉藤博之会長が物流の視点から意見を述べた。
悪天候時の対応について、松尾氏は、事前に予測できる場合は取引先などに連絡しトラックの30分前出発を行うほか、店着時間の拘束を解除していると説明。また、「スーパーマーケットの使命は、『地域のお客様のライフラインを守る』ことだが、一方でドライバーの安全を守ることも重要で、この線引きが難しい」と述べ、2022年1〜2月の大雪時の宅配の事例を報告。「ドライバーに無理をさせないため配送先を3分の1に絞ったが、お客様から感謝の手紙を多くもらった」と紹介した。
斉藤氏は「2024年問題への対応として今後、共同配送や中継輸送などが進み、運行本数が減る。1台の車両の積載率が高まり、重要性もより増すことになるが、悪天候でこの車両が動けなくなった場合、商品供給を受ける地域への影響も大きくなる」と問題提起し、「気象データを有効活用し、悪天候時に無理な運行をしないよう発注をする工夫が重要」と話した。
また、「道央から地方部への輸送において、ドライバーが確保できず、中継輸送もできないという事例が実際に出ている。2024年問題の影響で、モノを届けられない『輸送限界集落』が来春から道内に出る可能性がある。これを防ぐため、地方の道の駅などに広く共用できる中継輸送拠点とあわせて一時保管・仕分けスペースの整備をしてほしい。検品や伝票、保険のあり方などの研究も必要。北海道で『届かないエリア』を少しでも減らすため、売る人・買う人・運ぶ人の3者で今後のあり方を考えねばならない。モノが届くのが当たり前ではなくなると再認識してほしい」と訴えた。
このほか、北海道大学大学院工学研究院の萩原亨教授、同研究院の高橋翔准教授、北海道開発局建設部道路計画課の松本一城道路調査官、日本気象協会社会・防災事業部の小笠原範光副部長らが登壇し、意見を述べた。