「トラックのドライバーや整備士の人材不足が社会課題として大きく取り上げられ、行政などからさまざまな支援が行われているが、板金・塗装業界も同様に人材の不足や高齢化が著しい。この業界にも公的な支援がなければ、トラックが壊れても直せなくなり、物流が止まってしまう。そうなると社会・経済活動も止まる」と警鐘を鳴らすのは、大型車をメインに板金・塗装、事故車の修理などを手掛けるFスタイル(石狩市)の富士道聡社長。
取り扱う車両のほとんどがトラックや特殊車両で「高い技術で死にかけたトラックにもう一度命を吹き込んでいる。当社が物流を支えている」という自負を持つ。

創業から4年目と後発だが、充実した設備と人材、丁寧な仕事が評価され、道内全てのトラックディーラーから依頼が相次いでいる。「顧客には、修理はアフターサービスが充実しているディーラーに出すよう勧めている」としており、基本的にディーラー経由で請け負う仕事が多いが、それでも「大手物流企業が本州や九州から、わざわざフェリーでトラックを運んでくることもある」という。大手の工場が断るような難しい案件でも積極的に引き受け、「来てくれた人を必ず笑顔で帰す」ことをモットーとしている。
同社長は全国展開の総合物流企業のグループに28年間所属し、ドライバーから営業所長まで務めた。「物流業界の支えになりたい」と独立し、経験のない板金・塗装業を選択。1年目に塗装を行う第一工場、2年目に板金修理などを行う天井クレーンを備えた第二工場を開設、現在4期目を迎えており、板金、塗装、フレーム修正まで一貫して対応している。1級整備士4人、2級整備士3人を抱え、事業が順調に拡大、第三工場の開設も視野に入れている。
同社では20代〜40代の若いスタッフが多いが、同業他社を見ると「後継者がいない」「職人の高齢化が進む」といったケースが目につき、「このままでは壊れたトラックを直せる人がいなくなるのでは」と憂慮するようになった。
「特に地方では深刻。このままではトラックを直すのに数年単位かかるようになる。事故を起こして車両が潰れてしまっても、多くの運送会社は代わりのトラックを直ぐに用意できない。修理しようと思っても、この人材がいなければ、どうしようもない。板金・塗装業界は物流業界を支えている縁の下の力持ちだが、あまり注目されず、公的なサポートも薄い。ドライバーや整備士だけではなく、板金・塗装に対しても手厚い補助がないようなら、本当に物流が止まってしまう」と訴えている。