NPO法人北海道野球協議会は、糸がほつれて使用不可となった硬式球を障がい者就労支援施設で修繕・再生し、再利用・活用を促す取り組みの「インクルージョンボール事業」を行う。このプロジェクトに物流企業として、幸楽輸送(不動直樹社長、札幌市清田区)とシンクラン(鶴賀裕行社長、金沢市)が協力する。
このプロジェクトについての記者発表が7月5日、幸楽輸送の親会社である北海道コカ・コーラボトリング構内の立体自動倉庫前で開かれ、NPO法人北海道野球協議会の柳俊之理事長、NPO法人札幌市障害者活動支援センターライフ(元気ジョブ)の前野充氏が出席、幸楽輸送、シンクラン両社のトラックを前に事業の概要や目的を説明した。
インクルージョンとは「包括、包含」の意味合いで、野球振興・情操教育・障がい者就労支援を目的とした取り組み。10年ほど前から京都府(NPO法人就労ネットうじ)で行われている「エコボール」の取り組みをモデルケースとし、道内では帯広市文化スポーツ振興財団が同様の取り組みを行っていた。今回の「インクルージョンボール事業」とこれら先行事例との大きな違いは、NPO法人北海道野球協議会が主催することにより、加盟するプロ野球の北海道日本ハムファイターズと高校・大学等のアマチュア野球が参画する「プロ・アマ連携」の社会貢献の取り組みとなっている点だ。これは日本の野球界で初めての取り組みとなる。
同プロジェクトには多くの事業者らが協力する。ボールの回収は北海道高野連が行うほか、ボールの修繕は元気ジョブと障がい者就労支援施設、糸・針などの必要資材はミズノ、事務業務はNPO法人札幌チャレンジド、修繕工賃一部負担として北海道日本ハムファイターズ、そして、物流面で幸楽輸送とシンクランが協力する。
様々なパートナーがそれぞれのリソースを提供し合うことで、今回のプロジェクトが実現した。
また、同日現在、リユースのパートナーとして道内の高校44校、ボールの修繕パートナーとして道内29の障がい者就労支援施設が参加することが決定している。
使用不可となった硬式級は、高校野球の大会などの機会に各校が持ち込み、それをシンクランが集荷し、北海道コカ・コーラボトリングの構内で幸楽輸送が管理・保管する。シンクランは、札幌近郊の場合はそのまま北海道コカ・コーラボトリングまで運び、地方の場合は幸楽輸送の物流拠点まで運ぶ。地方から北海道コカ・コーラボトリングまでの幹線輸送は幸楽輸送が担う。それぞれの障がい者就労支援施設は、ボールの修繕に向けて、北海道コカ・コーラボトリングまで引き取りにくる。これが基本的な一連の物流のスキームで、年間1万個に及ぶボールの輸送と一時保管は無償で行う。
同プロジェクトでは、ボールの修繕に対して工賃が発生するため、障がい者の自立支援につながるほか、野球界と障がい者就労支援施設との間で交流が生まれることを期待している。
NPO法人北海道野球協議会の柳理事長は「北海道の球界が連携した、地域貢献、社会貢献の取り組みとなる。このような仕組みにより、北海道で野球が盛んになるとともに、就労者支援活動にもつながることを期待している。活動の輪を大学や社会人などにもどんどん広げていきたい」と挨拶し、元気ジョブの前野氏は「今回のボール修繕の作業を通して、野球界をはじめとした多くの関係者と障がい者との交流が深まっていくことを喜びと感じている。社会貢献活動の機会をいただき感謝を申し上げる」と述べた。