北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議「中間とりまとめ」公表 結論の先延ばしを示唆 費用負担の議論で調整続く

国交省と北海道は9月3日、北海道新幹線札幌延伸に伴い生じる鉄道貨物輸送の函館線函館~長万部(海線)間に関する諸課題の解決方策などについて協議してきた「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議」の「中間とりまとめ」を公表した。

同会議は学識経験者、経済団体、鉄道事業者などで構成され、2023年11月からおよそ1年8か月の間に6回にわたって非公開で開催、関係者からのヒアリングを行い、今般、基本的な方向性を整理した。「中間とりまとめ」のポイントは「現時点での基本的な方向性」と「今後の進め方」の大きく2点。

「現時点での基本的な方向性」では、「札幌延伸開業の時点では海線の維持により貨物鉄道の機能を確保することが必要」との結論を示した一方、「施設の保有主体、維持管理費用の分担、要員の確保・育成を中心に、整理すべき多岐にわたる課題の解決に当たっては国をはじめとする関係者でなお一層検討を深度化させていくことが必要」とした。
とりわけ、「保有主体」については、貨物輸送を専用とする並行在来線は前例がないため、「今後、どういった形で整理をするか協議・検討が必要。新設や既存の第3セクターの活用などが考えられ、いずれのケースでも出資者、出資割合、人材の確保・育成をどうするかについて調整を進めていく」必要性を指摘。
「維持管理費用」については「毎年度、数十億円規模の施設の維持管理費用を誰がどのような割合で負担するかの検討が必要。北海道庁、貨物鉄道の運行主体としてJR貨物などのほか、受益者負担の観点から、海線に係る貨物鉄道の利用者にも負担を求めるべきという意見もあり、全国的な貨物鉄道ネットワークを担うJR貨物を所管する国の役割分担を含め、多様な観点から検討すべき」とした。  

また、「今後の進め方」では「海線を取り巻く情勢が大きく変化していることを踏まえ、検討に当たっての時間軸を整理するとともに、旅客輸送に係るブロック会議の動向等に留意しながら、課題解決に 向けた議論を継続していく」とした。

【巨額な費用を誰が担うのか】

同会議では「中間とりまとめ」を昨年度中に、「最終取りまとめ」を今年度中に提示する予定だったが、札幌延伸が当初予定の30年度から8年も遅れる見通しとなっており、会議発足時とは状況が大きく変化した。結論を急ぐ必然性がなくなったため、「中間とりまとめ」では「時間軸を整理」との文言を盛り込み、結論の先延ばしを示唆。
また、「貨物鉄道の機能を確保することが必要」としたものの、「毎年巨額な赤字が出る」ことが確実なため、「誰がどの程度の負担をするか」を今後具体的に決めなければならない。これは同会議発足前からの最大の論点であり続けており、その意味では同会議は現時点まで「議論を進めることはできていない」とも言える。

費用を負担する主体として、中間とりまとめでは「北海道、JR貨物、貨物鉄道の利用者、国」の記載をしているが、「毎年度、数十億円規模」の負担はあまりに巨額なため、難しい調整が今後も続くことは確実な情勢だ。

【国交大臣も結論先延ばしに言及】

中野洋昌国交大臣は9月5日の会見で「海線は、北海道と本州を結ぶ青函トンネルと直結する路線であり、今般の中間とりまとめでは、今後の北海道及び全国の物流のあり方に関する重要な方向性を示していただいた」とし、「最終とりまとめの時期は、北海道新幹線の札幌延伸の開業時期の変更など、有識者検討会議を立ち上げた当初からは情勢が大きく変化している。このため、予定していた最終とりまとめの時期も変わる見込みだが、旅客輸送に係る地元自治体の会議の動向にも留意しながら、議論を継続していく。今後の進め方については、有識者検討会議の共同事務局でもある北海道庁などの関係者と調整していきたい」と述べた。

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