自動車運送事業労働力確保対策セミナー 女性ドライバー活躍に向けて事例紹介など

北海道運輸局は2月15日、札幌第2合同庁舎で「自動車運送事業労働力確保対策セミナー〜女性ドライバーが活躍できる業界へ」を開催した。北ト協、北海道バス協会、北海道ハイヤー協会、北海道自動車運送事業労働力確保対策検討会が後援した。

北海道運輸局の阪本敏章次長は「自動車運送業は地域を支える公共交通機関・社会基盤として極めて重要な役割を果たしているが、昨今の人口減少と少子高齢化を背景とした労働力人口の減少によって、ドライバー不足が既に顕在化し、安定的なサービスの継続に影響を及ぼしている。女性の社会進出が進む中、運送業での割合は低く、細やかな気配り、高いコミュニケーション能力、丁寧な運転を持つ女性のさらなる活躍が望まれる。そのためにも、女性に配慮した労働環境の整備、ワークライフバランスへの配慮、業界のイメージアップなどをはかる必要がある」と挨拶を述べた。
事例紹介として、トラック運送業界からは、北海道フーズ輸送(札幌市西区)の笹本圭太取締役総務部長が「女性ドライバーが活躍できる職場へ」、工藤商事(夕張郡)の山下直香営業課長が「女性が輝ける職場へ」と題してそれぞれ講演した。

笹本氏は、ドライバー305人中、女性は5%程度であり、人材不足への対応に加え、「業界イメージの向上、職場の活性化、サービス向上の足がかり」のためにも、「女性ドライバーの活用は極めて重要かつ喫緊の課題」であると説明。
女性ドライバーの採用・定着に向けて「女性専用のトイレ、休憩室の設置」「女性を対象とした求人広告の継続的な掲載」「未経験でも働きやすい運行ルートの設定・車両設備の充実」といった施策を行ったことで、女性ドライバーが増加し、「職場が明るく・清潔になった」「同僚への気配りの風土が強くなった」といった効果があり、ドラコン地区予選での入賞者の輩出にもつながったと述べた。
また、女性ドライバーには、「労力を減らす配慮を求めるタイプ」と「男性と伍してバリバリ働きたいタイプ」がおり、「これを見極めることが定着につながる」としたほか、今後の課題として「初期研修制度」「更衣室など職場環境」「ハラスメント対策」などの更なる充実に加え、「半日勤務・勤務日数限定」など多様な勤務形態の造出、「育児休業・介護休業への理解促進」といった点を挙げた。

山下氏は、ドライバーとしてキャリアをスタートさせ、現在は運行管理・配車・営業の担当者として業務を行っている自身の経歴を説明。「稼げると考えて18歳でトラックドライバーとなり、仕事が楽しくてしかたがなく、天職と思った。結婚・育児を経て、大きいトレーラーの運転をしたくなり、現在の会社に就職した」と話し、運送業界は昔と比べて大きく変わっていると強調。
10年くらい前までは「女性では大きい車は無理」「挨拶をしても生返事しか返ってこない」「仕事の仕方もろくに教えてもらえない」という風潮だったものの、現在は「コミュニケーションが活発となり、みんなが助け合い、笑顔が絶えない職場となっている。昔のドライバーは『何時までに行け』などと言われていたが、今は無理なことをさせなくなっており、当社でも2人の女性ドライバーが10㌧車で鋼材や建材を積み、全道を走っている」と報告。
このほか、「専用の休憩室やトイレなど女性が働きやすい環境が業界全体に不足している。また、今後はドライバーの労働時間の短縮を余儀なくされるが、同時に運賃・料金を下げずに売上高を確保していくことも大きな課題。このままでは将来、物流が危機に陥ると感じている。国はこういった対策を考え、運送業界を盛り上げて欲しい」と訴えた。

本間社会保険労務士事務所の本間あづみ代表が「女性が活躍できる職場づくり」と際して基調講演を行い、女性に就業してもらうためには、育児、介護、闘病などをしながらでも働き続けられる職場づくりが重要と強調。「こういった取り組みを考えている場合、『次世代育成支援対策法』と『女性活躍推進法』の2つの法律に基づいた『一般事業主行動計画』の策定が有効」とし、「これによって女性の採用・活用・定着・モチベーションアップなどについて具体的・計画的に取り組みを進められる。また、『くるみんマーク』『えるぼしマーク』などの各種認証を取得でき、企業のイメージアップにもつながる」と説明した。
また、女性が活躍できるような組織風土が必要とし、「企業トップによる強いメッセージ、管理職の教育、ハラスメント研修、相談窓口の設置といった取り組みが有効」と述べた。

北海道労働局雇用環境・均等部企画課の曽根浩太主任は「女性活躍推進法」「両立支援等助成金」の概要を説明し、運送業における女性活躍の推進に向けて、「職場の美化・清掃」「女性用の休憩コーナーの設置」「軽い荷物の配送、近距離の運転、積み込み積み降ろし負担の少ない業務など無理なくできる仕事の洗い出し」「HP等でのPR」が有効だとした。

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