北海道「北極海航路」調査研究会  航路活用に向け最新情報の共有図る

北海道と北海道経済同友会は3月7日、ホテルポールスターで「北海道『北極海航路』調査研究会」を開催した。
東アジアと欧州を最短距離で結ぶ新たな商業航路として注目されている北極海航路の利活用に向け、同航路のアジアの玄関口にあたる地理的優位性をもっている北海道の関係者が最新情報の共有を図ることを目的としたもので、各種報告が行われた。

国交省総合政策局海洋政策課の水島諒大主査が北極海航路の最新動向や日本の北極政策について解説。「気候変動の影響により北極海における海氷面積が減少し、6月後半〜11月後半の航行が可能となっている。スエズ運河を経由する南回り航路と比べて約6割の航行距離で、海賊リスクも少なく、欧州とアジアを結ぶ新たな選択肢として可能性が高まっている」と説明し、「2018年は同航路を利用した総貨物量は1603㌧で過去最高を更新した。欧州からの東向き航行では鉄鉱石や資料等の輸送、アジアからの西向き航行では石炭や冷凍魚等の輸送が多く、同航路利用船舶の日本の港湾への寄港は資源輸送(スポット輸送)、鯨肉輸送が中心」と述べた。

北日本港湾コンサルタントの市川克己第二技術部長が「北極海航路の拠点形成に向けて〜委託業務中間報告」と題して講演。
北極海航路の航行実績を有する船舶諸元は、全長190〜200m、満載喫水は最大11m、岸壁規模は延長250m、水深-13mが必要で「北海道にはこれらの条件を満たす港湾が室蘭港、苫小牧港、函館港、小樽港、釧路港、石狩湾新港と複数存在し、ポテンシャルは高い」と強調。
EU〜北海道発着の実入りコンテナ貨物取扱個数(TEU)は、輸入7:輸出3の割合で「圧倒的な輸入超過」とし、週1便で季節変動を考慮すると「1便あたりの北海道発着分の個数は、輸出で27TEU、輸入で71TEU、近隣の青森県・秋田県向けを考慮しても輸出は13TEU、輸入は18TEU」程度と説明。中継港・ハブ港化に向けて「道内及び近隣県の貨物のみでは絶対的に荷量が少なく、拠点化に向けては全国及び近隣諸国との連携が必要。既往貨物に頼るのではなく、航路活用による新たな貨物を発掘する視点が重要」と述べた。
バルク貨物は「既に実績があり、今後も継続される可能性が高い」とし、コンテナ貨物では、同航路での輸送のメリット(リードタイム、輸送費用、輸送品質)が高いと想定される品目を抽出。「輸出では自動車部品、ベアリング、魚介類、輸入では農業用機械、木材・木製品、魚介類、非鉄金属、肉類」といった品目を挙げ、「EUとの経済連携協定(EPA)の発効に伴い、関税撤廃が予定される工業製品や農林物の貿易促進により、コンテナ貨物の需要増加が期待される」とした。
また、貨物集約のシナリオとして、短期的には「中国船社のサービスを活用した北海道港湾への寄港」、中期的には「海外・日本船社の定期輸送サービスを活用した北海道港湾への寄港」、長期的には「海外・日本船社の定期輸送サービスによるデイリー運航」とするモデルを設定し、同航路活用に向けて「参加企業拡大に向けた情報共有や意見交換」「新たな貨物需要の掘り起こし」「試験輸送の状況調査」「必要な施設や機能の整備」「船社の動向把握」などの取り組みを進めることが必要とした。

北海道総合政策部交通政策局交通企画課の賀川智章主査がカムチャッカ地方の現地調査について報告。「今後、北海道の港湾が北極海航路輸送のハブ化のハブ化を進める上で、カムチャッカ地方との連携が不可欠と考えられ、コンテナ輸送に関して物流面での連携方策を探る必要がある。沿海地方はシベリア鉄道による輸送を中心に考えているため、ハブ港としての優先度は低い」と説明した。

このほか、北海道大学北極地域研究センターの大塚夏彦教授が「ロシアの北極海航路開発動向」、北海道経済同友会幹事で北海道二十一世紀総研の中村栄作社長が「ロシア現地調査(ヤマルLNG、サンクトペテルブルク)報告」をテーマにそれぞれ講演した。

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