[ロングインタビュー]ジャスト・カーゴ② 債務超過の会社引き継ぎ 住宅資材・設備等の共同配送の仕組み構築

北海道を中心に住宅メーカー、住宅資材・設備メーカー、製材・材木工場などを顧客として幅広く事業を展開しているジャスト・カーゴ(石狩市)。
住宅資材・設備の共同輸配送の仕組みや、住宅資材・内装材を部屋ごとに現場まで運ぶ仕組みを道内でいち早く構築するなど、物流効率化のための提案型営業を得意としている。清野敏彦社長は平成元年にドライバーとして物流業界に入り、同6年の同社立ち上げの際は創業メンバーの1人となった。その後、受注量の急減によって会社存続が危ぶまれる中で事業を引き継ぎ、資金繰りや借金で大きな苦労を経験する。同社長にこれまでの足跡を語ってもらう。全2回の2回目。

清野敏彦社長は平成17年に債務超過に陥っていた会社を引き継いだ後、1年くらいは資金繰りばかりに考えがうばわれ、「寝ても覚めてもお金のことばかり考えていた」という。
当時、ほぼ1社のみだった荷主の住宅メーカーからの受注が激減しており、この頃から他の荷主の仕事をはじめる。住宅メーカーの仕事に関係する資材メーカーや設備メーカーなどの仕事を徐々に取り込み、がむしゃらに仕事をこなした結果、同18〜19年頃には資金繰りも一息つけるようになった。
また、同社長は社長就任後、時間をつくって様々な会合に顔を出すようにした。すると業界内で徐々に交流をもてるようになり、それが積み重なって仕事も広がっていった。

「それまでは他社との接点がなく、荷主1社だけで飯が食えていた。業界内で他者と接点もち、情報をもらうようになると、資金繰りは厳しかったものの、仕事は増えていった」。
また、長野県に赴任していた時の仲間も同社の窮状を知り、「清野がやるなら」と北海道での案件を紹介してくれた。

「一番苦しかった頃、本当に多くの人に助けられた。仕事を任せてくれた荷主、紹介してくれた仲間、リース屋も会社がもたない可能性がある中で助けてくれ、おかげで仕事を増やす時に車を買うことができた。なによりもついてきてくれた社員に感謝している。どうみてもダメそうな会社で、倒産の風評も出回っていた。この時に助けてくれた人たちがいなければ、そこで終わっていた。人の暖かさによって生かされた」。これらの人たちとの付き合いは、今でも大事にしているという。

仕事がまわりはじめるようになると、同社長は荷主に対して積極的に物流効率化の提案をはじめる。昨今、北海道では同業種の荷主による共同配送の取り組み事例がクローズアップされているが、同社は10年以上前から同様の仕組みを考え、荷主に提案し、運用している。

同18年頃には道内でいち早く「住宅資材・設備の共同輸配送」の仕組みを構築する。
「当時は競合関係にある荷主が共配をするなんて抵抗がある時代で、一緒に運ぶことはありえないという感覚だった。しかし、物量が少なくて広い北海道では、配送先の多くが同じところだった。他社の商材を一緒に運ぶ仕組みをつくれば、物流が効率化でき、物流コストも下げられると考えた」。

実際に行ってきた数ある提案のうち、早い段階で受け入れられたのは「時間指定をはずした住宅資材の共同配送」だった。
住宅関係の配送は時間指定が多かったが、「その時間に、その商材が本当に必要なのか」を調査すると、実際は2割くらいしかなかった。多くは現場や営業部門が『〜時着なら間違いない』と何となく時間指定をしているだけで、これによって物流がどれだけ非効率になるかという考えは顧客側には薄かった。
同社長は工場、営業、現場の施工を巻き込んで、「時間指定をはずして混載によって運べば、物流コストを大幅に抑えられる。1日3台のトラックで運んでいたものが、共配によって1台ですめば、こちらも助かる」と提案してまわった。

「営業部門を巻き込むことが特に重要だった。『物流なんて関係ない』というスタンスの彼らに『物流はトータルのコストとして販売価格にまでひびく。物流を効率化してコストを下げることができたら、ライバル企業との競争で優位に立てるかもしれない。一緒になってコスト削減しましょう』などと話すと、共配の有用性が理解されるようになった」。
「現場と工場と営業、一体で考えないといいアイデアは進まない。物流は荷主の部門を超えて、効率化の話をするべき。それも単純にコストを下げるのではなく、改善の提案をすることが重要。わかってもらえれば話が早いし、大手ほど話を聞いてもらえる」と話す。

このような動きを続け、複数の住宅メーカーをはじめ、住宅資材・設備メーカー、製材・材木工場など住宅に関連する幅広い顧客を中心に仕事を大きく広げ、経営を軌道に乗せた。現在でも荷主の物流担当だけではなく、営業担当など部門を跨いだ働きかけを行い、共同配送をはじめとした物流効率化につながる提案営業を先頭に立って進めている。

同社長は、「ドライバーあがりのため、提案のための文章を書くのは得意ではない」とするものの、「今ないもの」「これからできるもの」といった「5〜10年後の世界」をイメージすることが好きだという。
「可能かどうかを別にして、最適な形をイメージする。その際、自社をはじめ発着荷主などの利害を一切考えず、『どうなるのが一番いい物流なのか』を天から見る感じで、純粋に理想の形を考える」。
当然、現実の問題として実行不可能なこともでてくるが、その際はそれを実現するために具体的に何をすればいいのかを考え、問題を1つずつ潰していく。「こちらの提案に対して、顧客などから『理屈はいいけど難しい』といった反応があったなら、『何故できないのか』と聞き、1つでも2つでも課題を乗り越えていくよう話を進める」とし、このような取り組みについて「漫画の世界を現実の世界にする」作業と表現する。

「今の仕事のやり方を将来も同じようにやっているかというと多分違う。『どうしたら物流の効率がよくなるのか』を考えて、こちらから顧客に提案することが重要。その際、10〜20年後も一緒にパートナーとしてやるなら、価格だけの話だと続かない。物流の仕組みそのものを改善しないといけない。今と同じスタイルで仕事を続けていくだけなら、10年後には通用しなくなっている」。自社や荷主だけにとらわれるのではなく、もっと大きい枠で見ると、積載状況や発着場所の組み合わせによって、「いろんな物流の組み方ができる」と強調する。

「正解は1つでなく、やり方によっていろんなことができる。はじめから無理だと諦めるのではなく、まずどうやったらできるのかを考える。弊害が出てきても、それを除いていけばいいだけ。もしかすると『建材と卵』や『建材とアイス』といった共同配送もできるかもしれない」と話す。
同社では手がけていないが、コンビニの配送についても「車両サイズも同じ、店舗もだいたい近くにあり、荷物はカーゴテナーなので、グループを超えて物流の共同化を進めれば、大幅な効率化につながる可能性が大いにある」と指摘し、「バカみたいなことと思われても、一番シンプルなの物流の形を阻害しているのが何か考えると、意外とできないことはない」と捉えている。

会社としては、基盤がしっかりしてくるに従い、教育、ルール、コンプライアンスなどを意識するようになり、これらをしっかりと整備しなければ、次のステップにいけないと考えるようになった。
「自分がドライバーだった時は、輪留めなんか関係なく、制服なんか着ないのが当然。荷物が間に合いさえすれば、どこで休憩しようが、一回会社を出るとほぼ自由だった。だが、今は服装の着用から言葉遣い、運行ルート、休憩のタイミングまで指示される。昔の考えなら、『そこまで管理されてまでドライバーやりたいのか』となってしまうが、時代の流れを無視していると取り残される。今の若い人材は給料よりも休みや働きがいを重視する。新しい層に対応した事業スタイルを考えないと生き残っていけない。会社の風土を変えていきたい」と話している。

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