丸吉ロジ(吉谷隆昭社長、北広島市)は、この10年で事業規模・従業員数がおよそ2倍に成長し、事業エリアも北海道のみならず、関東、東北と東日本に拡大した。また、主力事業をトラック輸送の一本足から、「輸送」「3PL」「モーダルシフト」と増やし、それらをトータルで管理する「オペレーションシステム」を絶対的な強みとして打ち出し、「鉄の物流を変えていく」をミッションに掲げるようになった。
同社の成長の根幹には、「考え抜いた事業戦略」の設定と、その達成に向けて「変化を積極的に推奨する社内風土」の浸透があるように映る。
同社は元来、重量物・長尺物の輸送に強みを持っていた。「今でもそれが会社の根幹にあることは事実だが、時代の動きを予想し、あるべき未来の姿を考え、それに向かって変化・対応した結果が現在につながっている」(吉谷社長)。
同社の「あるべき未来の姿」とは、「経営羅針盤」と名付けた中長期の経営計画に記し、社内外に公表している。羅針盤は現在、2016年度〜2020年度までの5年間の戦略を示した第2弾の期間中であり、そこに示した主要な項目は現在、「前倒しで達成できている」と断言、大きな手応えを掴んでいる。
「HPの進化」「本社社屋の一新」「仙台進出を果たし東日本エリアに鉄の三角物流網を構築」「各省庁と連携し、モーダルシフトを大きく推進」「地元の各小学校での出張事業」「トラック協会青年部代表に就任」「40周年式典開催、全社員が一同に会す」「ISO39001の浸透」「東北地区での新たな3PL拠点開設」などがその一端だ。
「40周年の式典は、全拠点、全従業員が集まった初めての機会で、準備にかかる労力や費用はとても大きかったが、羅針盤に書いていなければ、言い訳をして開かなかったかもしれない」。記念の式典を本社がある北海道でも、近年事業の伸張著しい関東でもなく、事業拠点としては最後発の東北で開催したのは「東北でやる意義が、この1年でより明確になったから」だという。
東北にはおよそ3年前から進出。被災地特例を活用し、北海道ナンバーで運行、協力会社に点呼をしてもらっていたが、昨年後半から自社の管理者を配置し、正式に営業所を構え、「今季から本格的に事業が花開く」という。
現在、2つの拠点立ち上げを同時並行で進めており、トラック5台と作業員30人規模でスタートする計画。「再来期には関東に匹敵する規模になると確信している。東北に行き、この3年間でわかったのは、関東と結ぶフェリーでのモーダルシフトの強みが活きること。関東からトラックでモノを運べなくなっており、また、運送や倉庫だけでもない、トータルでの管理手法を評価いただいた。東北での震災復興のピークは2年前で荷動きは一巡したが、需要が落ちても、供給が多くない状況が続いている。鉄の業界では、これからも困り出すところは増えてくるので、その受け皿となりたい」とする。
鉄の物流の一元管理は、自身が苫小牧営業所立ち上げで構築したスキームが基礎となっている。これは、「荷主のセンターに入り込み、輸送のみならず、作業のオペレーションを引き受け、加工、物流診断、入出荷、保管、在庫管理などを一元管理する」といった形式で、同社の大きな武器だ。関東の浦安鉄鋼団地にある顧客の大型物流センターで実績を積み、これが評価されて、東北での展開にもつながった。
同社の成長の要因について、同社長は「将来をしっかり考え抜き、策定した『羅針盤』が大きい。ここに書かなければ出来ないことが多かった。40周年式典も羅針盤に書いたからやれたという側面が大きい。浦安での大規模センター業務の受注も、羅針盤に書いていなければ慎重に考え、受けられなかったかもしれない。東北での拠点立ち上げもそう。『やる』と決めたことにはアンテナが張れ、確固たるイメージがあるから、話が来た時にやれる。決して何でもかんでもやっているわけではなく、自分なりに深く考えて『こうなるであろうという未来』を設定し、そのアンテナにかかる事業に着手してきた。その積み重ねが大きな変化につながった」と捉えている。