富良野通運(富良野市)の永吉大介社長は今年6月の株主総会で専務から昇格した。
北九州市出身の47歳。「物流をやりたかった」として大学卒業後、JR貨物に入社、主に関東での拠点やフォワーダーへの出向、本社営業部などでの勤務を経て、2011年に北海道に赴任。営業担当課長や札幌営業所長など管理職を経て、2年前に富良野通運に転職、JRコンテナを「使ってもらう側」から「使う側」へと転身した。
道内勤務では、通運業界をはじめ、幅広い人脈を構築。
富良野通運に転職したのは、「藤田均会長(前社長)の誠実な人柄と、広い視野で物事を考えている姿勢に惹かれたことに加え、富良野という地域が好きになり、地域づくりに携わりたいと考えた。思い切った決断となったが、飛び込んだ」と話す。
JR貨物では「かなりの跳ねっ返りで異端児だった」と振り返る。「フォワーダーへの出向で国際複合一貫輸送を勉強させてもらった。この際、JRではそれほど強く意識をしない輸送原価や利益構造の感覚が身に付いた。輸送モードも顧客のことを考えれば、『必ずしもJRにこだわる必要はない』という感覚が身に付き、鉄道マンというより顧客に寄り添う営業マンという意識が強かった」と話す。アイデアマンでもあり、北海道支社では、日本新聞協会の新聞広告賞を受賞した「認知度向上」に向けた広告キャンペーンの立ち上げも担った。
富良野通運は、JRコンテナによる青果物等の全国輸送のほか、飼料・肥料、木材、家畜、燃料(軽油・灯油・重油)などを扱うトラック区域輸送、その他食品加工業務のアウトソーシングを手がける。売り上げ比率は、コンテナ輸送が50%、トラック区域輸送が45%、アウトソーシングが5%。3年間の中期経営計画で売上高16億円の達成を掲げている。
「当社は顧客に対して誠実な会社。従業員も非常にまじめで実直。粘り強く案件の開拓を行い、実行に向けてより工夫を重ねていくようになれば、更に大きく伸びるポテンシャルを持っている」と捉えている。「JRから通運会社への転身」のため、「コンテナ輸送により力を入れる」と思いがちだが、「区域輸送に大きな可能性があり、面白い」と話す。
社長として取り組みたいいくつかのテーマを抱えている。
一つは、繁閑差の克服。地元農産品の出荷を多く扱うため、季節波動は避けられない面がある。通年の貨物を取り込むことで、繁閑差を平準化させるべく営業をかけるとともに、実現のための方策を練っている。
一つはKPIの活用による効率化。トラックの実車率、回転率、稼働率、労働生産性といったデータを吸い上げ、精緻に分析し、主要な指標を見える化し、配車マンなどに情報提供する。これにより、無駄の発見・排除、効率化に向けた取り組みを進める。
もう一つは、会社のブランド強化。同社長は近年、物流に関する学術論文を精力的に執筆し、農業や物流関連の学会や講演会などでの発表を続けている。今年度も日本物流学会の全国大会に「北海道農業分野におけるパレット化推進」に関する論文を提出、同社が実際に行った「玉ねぎ出荷のパレット化の効果」「出荷荷主へのヒアリング結果」「パレット化推進のための提言」などをまとめた。こういった研究と発信は「会社の認知度、ブランド価値向上に向けた取り組み」と話す。今後は、さらに研究を深め、質の高い情報発信を行うため、自主的に勉強を進める考えを持っている。