「苫小牧東部開発新計画の進め方について(第3期)」公表 食の移出入・輸出入の物流拠点化 トラック隊列走行も視野

国交省北海道局は8月20日、苫小牧東部地域開発の令和元年以降のおおむね10年間の段階的な開発の方向性を検討する外部有識者による「苫小牧東部地域開発検討会」の意見を踏まえて策定した「苫小牧東部開発新計画の進め方について(第3期)」を公表した。
「物流」「エネルギー」「情報」の優位性を柱として、多様な産業の集積、新たな食関連産業の創出、再生可能エネルギーの活用、自動走行・ロボット・ドローンの実証試験の誘致、災害時の拠点形成などを展開するといった開発の方向性を示している。
優先的開発推進区域として、柏原台地及びその周辺地区、遠浅地区の1300ha、臨海低地部等の1200haをあげている。

ロシア極東地域に隣接するとともに、北米及び東アジアの結節点という要衝を占め、日本の北の玄関としての役割を果たしている地理的優位性をいかし、安全かつ高付加価値の産品を安定して供給する物流を推進することで、アジア市場を始めとするグローバル市場の需要を取り込んでいく産業群の形成を図ることが重要であるとし、特に、苫東地域は、苫小牧港、新千歳空港に近接する広大かつ開発可能性の高い貴重な空間であり、総合的な経済発展基盤を創出することは北海道の発展に寄与するという基本的な方針を示した。
「産業機能」については、これまで苫東地域において立地が進んできた自動車関連産業やリサイクル関連産業を始めとする既存立地分野の集積を引き続き促進するほか、冷凍冷蔵庫等の大規模な物流施設を核とした食の移出入・輸出入の物流拠点化を進めるとともに、食品加工を始めとした多彩な食関連産業について積極的な展開を図る。
「研究開発機能」については、積雪寒冷地・高齢化社会におけるまちづくりを踏まえた自動車の自動走行の実証実験や研究施設の誘致を推進する。また、ロボット・ドローン産業分野への展開を視野に、研究開発基盤の形成を図る。
「基盤整備」については、引き続き、陸・海・空の交通ネットワークの充実及び安全・安心の確保を図ることとし、とりわけ国際競争力を高めるための物流ネットワーク機能の強化を推進する。
物流に関連した具体的な展開の方向として主に次のような項目をあげている。

[苫東地域の優位性等をいかした競争力の強化]
「物流」「エネルギー」「情報」を優位性の柱とした産業・プロジェクトの展開において、弾力的・機動的な土地の有効活用による産業施設、研究施設の誘致促進を図る。 物流機能における優位性の維持と更なる向上については、港湾施設や道路ネットワークなどの着実な基盤整備と機能を発揮し続けるための老朽化対策などの維持管理を適切に行う。 さらには、北方圏に位置し、欧州と北米、アジア間の物流における地理的優位性をいかし、国際的に注目されている北極海航路のアクセスポイントとしての優位性の検討を更に進める。これらの推進により、苫東地域の国内外に対する立地競争力の一層の強化を図る。

[既存の産業集積をいかした新たな食関連産業の創出 ]
道内全体の資源を活用して、道産品を道外や国外に出荷するという資源依存型の立地に優位性がある苫東地域において、産業集積を更に進めるには、道産品の付加価値を創出する取組により出荷量を増やすことが必要である。特に農産品については加工されずに本州に出荷されているものも多いことから、今後は苫東地域で立地が進んでいる物流、流通施設との連携や、既存産業の技術と知見を近年立地が進んでいる食品関連産業に取り込むことにより、高付加価値の健康食品、サプリメントの生産・加工場などの誘致が期待でき、更には漢方、医薬品の加工・生産といった農産品等を活用したバイオ産業への発展の可能性がある。これらについて、生産の場と一体となった加工場や研究施設といった展開も視野に、これらの誘致に向けた取組を進める。

[強靭な国土づくりに貢献する拠点の形成]
平成30年の北海道胆振東部地震では、苫東地域においては震源が近く被害が発生したが、苫小牧港は一部被災があったものの、これまでの整備効果により、港湾機能への影響は少なく、全道的な停電により鉄道貨物に影響が出る中で、北海道と本州の間の物流を海上輸送により維持した。また、苫東地域では、被災地区以外において、交通アクセスのしやすさと柔軟な対応が可能な用地をいかし、大規模災害時の緊急対策要員及び資機材等の受入れの拠点、災害復旧のため撤去した土砂の仮置き場などに活用された。このように苫東地域が北海道での大規模災害発生時において重要な役割を果たしうることを踏まえ、道内外での災害に対応できるように、災害対応の「人員・物資・資機材の派遣・受け入れ拠点としての機能」と「北海道と本州を結ぶ物流機能」の強化を進めるため、災害時における海上輸送と陸上輸送の連携による物流ルートの代替性の確保について も広域的に検討を進める。また、災害時のみならず、平常時の運転手不足に対応するためのトラックの隊列走行による輸送の効率化について検討を進める。

[基盤整備]
国際競争力を高めるための物流ネットワーク機能の強化を図るため、苫小牧港東港区については、貨物需要などの要請を的確に把握し、既存の施設を有効活用しつつ、輸送船舶の大型化の進展や内外貿ユニットロード及びバルク貨物の増加等の多様な海上輸送需要への対応を進めるとともに、西港区と一体となって、我が国内外を結ぶ流通拠点となる港湾として、多様な機能が集積する総合的な港湾機能の形成を図る。また、道内の主要都市や拠点的空港・港湾とのアクセス強化を図る基幹的なネットワークの整備を進めるほか、苫東地域の諸活動を支援する域内道路については、各種機能等の展開に応じた整備が重要である。

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