日本気象協会北海道支社は10月18日、ANAクラウンプラザホテル札幌で公開シンポジウム「極端気象時の北海道への物流の確保・連携を考える」を開き、大雨、強風、高波、大雪、吹雪といった極端気象時の物流の現状や課題などについて議論を行った。
北海道開発技術センター、北海道道路管理技術センターとの共催。北海道開発局、北海道運輸局、札幌管区気象台、北海道、札幌市、NEXCO東日本、寒地土木研究所、北海道開発協会、北ト協、土木学会北海道支部、日本気象学会北海道支部、日本雪氷学会北海道支部、日本技術士会北海道本部、雪氷ネットワークが後援した。
日本気象協会北海道支社の佐藤隆光支社長は「近年、豪雨や大型台風などの異常気象や極端気象が相次いで発生しており、当面、減ることはないと考えている。今月、関東甲信越や東北を襲った台風19号では多くの犠牲者が出て、首都圏では交通機関が計画運休し、物流は集配を中止、多くの商業施設などが休みを余儀なくされ、都市機能が停止した。今後、物流面においても課題が検証されるとともに、復旧において物流はなくてはならないものとなる。本日はシンポジウムを通して、極端気象時の物流に関して考えてもらいたい」と挨拶を述べた。
シンポジウムに先立ち、北海道大学大学院工学研究院の岸邦宏准教授が「北海道の持続可能な物流ネットワークをつくる」と題して基調講演を行った。
「トラックドライバーの減少やJR北海道の苦境による鉄路維持問題などにより、平常時でも北海道の物流はギリギリな状況。異常気象などでバランスが崩れると、より大変なことになり、『運ぶモノはあるが、運ぶことができない』状態に陥る」と問題提起をし、輸送効率性と労働力の観点から、「北海道新幹線での貨物新幹線の導入の是非」「在来線鉄道貨物の存続すべき区間」「整備すべき高規格幹線道路」「輸送力を増強すべき港湾」などについて分析した自身の研究結果を報告したものの、「人流は乗客数が見えるので問題が可視化されやすいが、物流はコンテナや荷台の中身や積載率、どの品目がどこからどこへ運ばれたかなどがわからない。北ト協に照会しても、北海道で稼働する事業用トラックの台数やトラックドライバーの数を正確に把握できていない状況で、最適化に向けた客観的な議論が難しい」と指摘した。
シンポジウムは、岸准教授、北海道大学大学院工学研究院の萩原亨教授、北海道開発局建設部道路維持課道路防災対策官の青木秀一氏、 NEXCO東日本北海道支社道路事業部事業統括課課長の加藤謹也氏、日本気象協会北海道支社事業サービス課気象予報士の森和也氏とともに、物流事業者として北ト協理事・総務委員長の野村佳史氏(丸日日諸産業)が登壇し、それぞれが近年の異常気象時の対応や課題などについて報告。
野村氏は「台風時の北海道〜本州間のフェリー輸送」の対応について説明。「GPV気象予報など活用してフェリーの運航を予想、台風の進路予想図により、船の欠航の可能性がある場合、荷主に運航の前倒しなどができないかを連絡する」「納期厳守の積荷の場合、中長距離フェリーが止まっていると長く陸上を走り、青函航路を活用する。この場合、同航路に集中するため、順番待ちが300番台になることもある」などと話した。
このほか、道路管理者からは、「道東道の4車線化」「重要物流道路の設定」「通行止め可能性や解除見通しの事前広報」「除雪体制の整備」といった対応が紹介され、岸准教授は「本当に運ばないといけないモノと、そうではないモノを考えないと、物流が立ち行かなくなる場面もでてくる」と指摘した。