開基150周年・開港120周年を記念して「ザ・シンポジウムみなとin小樽」が11月27日、小樽市民センターマリンホールで開催され、小樽港が担う役割や将来像についての議論が行われた。「ザ・シンポジウムみなと」実行委員会と小樽市が主催した。
小樽港は現在、フェリー航路・コンテナ航路などの物流機能、クルーズ船・マリーナ・観光船などの観光機能を有するほか、官庁船・漁船などが往来する多様な機能を有しており、「『近代化』を運んだ港」と題して基調講演を行った小樽市総合博物館の石川直章館長は、明治から戦前までの同港の歴史を紹介し、「明治後期には、北前船や貨物蒸気船が多く行き交い、北海道の近代化を担った人々が多くこの港を活用した。また、石炭の搬出港として、日本の近代化を推し進める原動力の役割も果たした。人とモノが行き交う十字路として機能し、日本人が必死に生きたこの100年あまりの掛け替えのない証人。次の100年、小樽港は何を担うのか」と問題提起を行った。
続けて「未来の小樽港~多様な機能に効率的に対応する港湾を目指して」をテーマにパネルディスカッションが行われ、物流事業者、旅客事業者、地元経済界、学識経験者ら6人が登壇、物流と人流の面から、同港の現状と課題などを議論した。
迫俊哉市長は「太平洋側の台風や有珠山噴火など自然災害に強いのが特徴。北海道と本州の日本海側を結ぶ唯一の定期フェリー航路(新潟・舞鶴)を有し、平成10年度には2350万㌧あまりの貨物取扱量があったが、近年はこの半分の水準で推移している。海外へは、上海、大連、青島、ウラジオストクとの定期航路があるが、外貿コンテナ置き場が分散化しており、荷役作業の効率化が図れていない。現在、小樽港長期構想検討委員会を開催しており、ここでの議論を踏まえ、埠頭の再編成、合理的な動線の確保に取り組んでいく。現状ではロシアや中国の対岸にあるという立地的な優位性をそれほど発揮できておらず、輸入超過による片荷を解消するためにも、小樽から輸出を増やすようポートセールスに努めたい」と述べた。
北海道港運協会小樽支部の大田秀樹支部長(ノーススタートランスポート社長)は、「施設の老朽化が進み、フェリーを除く穀物、ロシア貿易、コンテナ輸送などの扱いはこの20年で半減し、いずれも単独での大幅増加は見込めない状況。付加価値を高める流通加工が可能な大規模な物流倉庫も多くない。今後、企業誘致を積極的に進め、新たな産業の育成に取り組んでほしい。道内屈指の観光地を抱えている港湾なので、道路整備や観光と物流の住み分けを含めた効率的な再編を求めたい」と述べた。また、「海外との貨物取り扱いを増やすため、助成などのインセンティブの充実とその周知が必要なほか、北海道の日本海側の玄関である石狩湾新港との連携を深め、共存共栄を図ることも重要。いずれも1企業での推進は難しいので、官民一体となって真剣に取り組んでいくべき」と主張した。
北海商科大学の田村亨教授は「AIの社会実装が進んでおり、いち早く小樽で荷分け作業などに導入してほしい」と話した。