コロナショック・北海道の物流業界の動き②〜先行き不透明さ続く

新型コロナウイルスの感染拡大による道内経済への影響が更に続き、先行きが不透明なことから、物流事業者からも不安の声があがっている。道内での感染者は3月8日、都道府県で初めて100人を超え、「人が集まらない・動かない」状況がいつまで続くのか、不安が広まっている。北海道では2月28日〜3月19日を期間として「緊急事態宣言」を出しているが、緊急事態の収束時期を早めに示してほしいとする声が増えている。

物流業界内では先週に引き続き、各種行事等の相次ぐ中止・延期の決定が続いた。北海道やJR北海道などは同9日に予定していた「北海道新幹線で鮮魚や弁当等を東京駅まで運び、販売するイベント及びセレモニー」を中止、陸災防札幌分会は同10日に予定していた「働き方改革対策セミナー」、JL北海道は同16・19日に開催予定だった「運行管理者一般講習」、北海道アルバイト情報社は同28日に予定していた「物流業界のお仕事さがしフェア」をそれぞれ中止、ロジネットジャパンは4月18日に開催予定だった「チャリティーコンサート」を中止した。このほか、非常に多くの行事が中止となっている。

北ト協は3月4日、「車内、無線機、アルコールチェッカー等共用場所、共用機器等の感染予防対策」「風邪、発熱の症状、強いだるさ、息苦しさ等がある場合は、即、医療機関を受診」するよう会員に向けて要請、同6日には「一人一人の咳エチケットや手洗いなどの実施がとても重要、感染症対策に努めるよう」重ねて要請した。

道内でとりわけ深刻な打撃を受けているのが娯楽、外食、観光、宿泊、交通など「人が集まる・動く」ことを事業の必須要素としている業種だ。一部の小売店では営業時間短縮の動きもある。当然、このような業種を取引先としている企業等にも影響は連鎖し、物流業界の多くの企業もこれに当てはまる。

札幌商工会議所が3月6日に発表した「新型コロナウイルスによる経営への影響について」の調査(回答386社)では、新型コロナウイルスによる経営への影響について、「影響が生じている」と回答した企業は19%、「長期化すると影響が出る懸念がある」と回答した企業は 60.7%、合わせて79.7%と約8割が「影響がある」と回答。また、具体的な経営への影響として「製品・サービス受注・売上減少、客数減少」との回答が6割強となったほか、全産業合計の2月業況DIは▲37.8となり、前月から13.7ポイントの大幅な悪化、これは北海道胆振東部地震発生時の落ち込み(前月17.2 ポイント減)と近い結果となった。

北海道中小企業家同友会が同日に発表したアンケート(回答621社)でも、新型コロナウイルスの影響について「現時点ですでに影響が出ている」が43%、「今後影響が出る可能性がある」が46%となり、約9割が「影響あり」と回答。具体的な影響では、「展示会、イベントの中止・延期」が50.6%、「来店数の減少による売上減少」が44.2%、「予約キャンセルによる損失の発生」が36.8%を占めた。

北海道の経済全体が一定期間シュリンクすることは確実で、これはもれなく「モノの動き」にも波及する。「現状、通常通り営業しているが、一番の問題は収束時期が不透明なこと。19日以降、緊急事態は撤回できて、通常の経済が戻って来ることを祈るしかない」(札幌市の事業者)、「BtoBの仕事なので、今はまだ荷動きに問題はないが、長期化すればどうなるかわからない。物流はオーダーを受けて動く業種なので、経済活動全般が停滞してしまうとやりようがない」(同市の事業者)といった声が相次いでいる。

一方で、「短期的には特需を迎えている」との声もある。道内で「外食等を控える」「子供が家に一日中いる」といった状況が急増したことで、スーパーやコンビニなどで食品を多めに買い溜めする動きも出ており、このような大手小売チェーン等に商品を運ぶ事業者からは「いつもよりも忙しい」との声も聞かれる。

また、外国人観光客の利用やスクールバスの運行が見通せなくなったことで、道内のバス会社が営業休止し、従業員を解雇する動きも出始めている。一部の運送事業者からは「バスドライバーの解雇が続くようなら、トラックがこの受け皿になれるのではないか」(同市の事業者)と人材確保に向けた好機と捉える向きもある。

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