コロナ禍における道内運送事業者

北海道では1月28日に第一例目の新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、感染者が全道に広まり、2月28日には、独自の「新型コロナウイルス緊急事態宣言」を全国に先駆けて発表、感染拡大防止のため外出を控えるよう道民に強く要請した。その後、国が4月16日に「緊急事態宣言」を全国に拡大、北海道は首都圏の1都3県とともに5月25日まで緊急事態宣言の解除がされなかった。
6月に入り、少しずつ社会経済活動が戻ってきているが、3〜5月のおよそ3カ月にわたり、道内の物流事業者はコロナ禍に見舞われた。この間の影響について事業者の声を聞いた。

「3、4、5月と月を追うごとに物量が減り、6月は更に落ちる」と話す建材を扱う事業者。この間2割前後物量が減少した。ある部所では輸入される商材がストップし、6月末まで荷物がないまま。この部所の従業員は休業させ、給与負担は雇用調整助成金でカバーする。「最終消費者のマインドが冷え込み、いい兆候はない」とし、コロナ禍で荷主が営業・販売活動が出来なかったことに加え、今後も急激な需要増加が見込めないことから、マイナスの影響がしばらく続くと見て、足元の資金確保のため、行政と金融機関から「無利子・低利子で少なくない額の融資を受けた」と話す。

食品を扱う事業者は「3〜4月は例年並みだったが、外食分野が落ち込んだ影響で5月は20%の減少、6月はもっと下がる見通し」とし、資材・雑貨などを扱う事業者も「5月は15%減少、6月は更に落ちる。大手小売チェーンなどコロナ禍でも動いているところはあるので、仕事を取り込みたい」と話す。

食品輸送を行う事業者は「ある荷主の出荷は30%減少した」とするものの、道内小売店への配送、北海道〜本州間の輸送が伸び、「全体の売上としては前年とほぼ変わらない」とし、花卉を扱う事業者も「花卉は30%程度落ち込んだが、他の分野でカバーできた」としている。
食品を扱う別の事業者は「ある荷主では3月は25%、4月は75%、5月は95%減少」と話すが、「運賃値上げの影響、既存荷主の業務拡大、新規荷主の獲得などにより、全体の売上はこの間伸びた」と話す。

農産品を扱う事業者は「端境期だったので大きなマイナスはないが、今後、どのような影響があるのか注視している」とまだ大きな変化はないとしている。

菓子や加工食品、飲料、医療品などを扱う事業者は「3〜4月は巣ごもり需要が増えたため、1〜2割の売上増、5月は例年並みだったが、6月以降は飲料が増える見通し、更に新規の仕事も始まるので期待している」とコロナの影響を感じさせない。

重量物を扱う事業者は「荷主により様々だが、減ったところは半分以下の物量。しかし、減った分は傭車の必要がなくなり、自社車両の稼働率が高まった。この間、燃料代も下がったので利益で見ると、それほど悪くない」と話す。

このほか、「荷物が減った分、荷主が物流を心配し、運賃の見直しが進んだ」「前年度に済ませた運賃・料金の値上げが利益に寄与した」との声も複数聞かれたが、「荷主の経営が痛んでいるので、運賃見直しの話は当面できない」とする事業者もいる。

社会経済活動の維持のため、物流は必要不可欠であり、コロナ禍であっても物流事業者は「荷主の活動が活発なら忙しくなり、荷主が停滞すれば仕事が減る」のが当然の傾向にある。
コロナ禍においても、「動いている分野」があり、チャーター便でない限り「仕事を取り込んでいくことは可能」なこと、また、「仕事が減った分、外注も減らせた」「この間、軽油価格が大きく下がった」など支出が減ったことで、深刻な状況にいたらなかったとする声が意外にも多く聞けた。

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