北海道電力は7月7日、異なる業種や分野から技術やノウハウなどを取り入れ新事業展開に繋げるオープンイノベーションの可能性について議論する「オープンイノベーションセミナーin 江別」のインターネットでのオンデマンド配信をはじめた。
物流業界からは、北海道物流開発(札幌市西区)の斉藤博之会長が「北海道物流改善の方向性~物流のオープンイノベーションによる北海道経済の活性化」と題して講演、今後求められる北海道の物流システムとして「地域共同配送」の考えを提案した。
斉藤氏は、北海道内の主なモノの流れ方について「一か所の物流センターに集められ、そこから放射上にトラックで全道各地に配送しているため、トラックの移動距離が長く、積載率が低い」と説明。
また、新型コロナウイルスの北海道経済への影響について、拓銀が破綻した平成10年以上のインパクトがあるとし、「道内どこの地域にいてもきちんとモノが届き、同じ価格で商品が買えるよう、物流による仕組みづくりが必要」だとして「地域共同配送」という物流システムを提案した。
これまでの「ハブ&スポーク方式の輸送」から、「地域ごとに大きな車で回転率を上げて運行するミルクラン方式の輸送」への転換が必要と主張。
その際、地域の大型店舗や観光施設などに物流機能を持たせ「店舗等のTC(通過型物流センター)化」を進めるとともに、「これまでホームセンター、スーパーなどカテゴリーごとに行っていた物流を混載」することにより、車の稼働率と積載率が上げられると説明した。
地域共同配送を実現させる重要な要素として、パレットやロールボックス、軽量コンテナなど予め標準化された構成単位に異なる種類、大きさ、温度帯の荷物を混載して運ぶ「モジュール化」の考えを紹介。
「モジュール化した荷物をテトリスのように1台の車両に組み合わせて積むことで積載率を高められる。また、手積み手降ろしがなくなるほか、仕分け、陳列、検品等の作業負荷の軽減にもつながり、物流の生産性が向上する」と述べた。
さらに、「物流の予約センター」を設けることで、効率が良く、安価な集配が可能になり、また、集配の需給状況に合わせて価格を変動させるダイナミックプライシングを実現させられるとした。
今後はBtoB分野の物流でも、サプライチェーン上で非対面・非接触(無人化、タッチレス化、キャッシュレス化、ペーパーレス化)への対応が求められるとし、AI、DB、IoTなどを活用して、オープンイノベーションを図っていく必要性を説いた。
位置・温度情報をはじめとするセンシングデバイス、識別認証技術、画像認識技術などを活用した物流システムの構想を披露し、多くの企業と協力して実用化に向け開発・普及に取り組んでいる各種物流機器・システムの紹介を行った。
斉藤氏は「地域自体を共同配送の対象とし、出入りする車を乗り合い型にし、スケジューリングのシステムを入れる。これを実現させることで、北海道の隅々までモノが届けられるよう目指していきたい。地域の物流は、地域の人が自分たちで変えられる」と強調した。