北海道物流開発(斉藤博之会長、札幌市西区)は、再生可能エネルギーを活用した道内都市部におけるバッテリー交換式EV(電気自動車)配送の事業化に向けて検討を始めた。併せて、配送拠点を有事における電力供給拠点とする考え。
「脱炭素型物流モデル構築」と「有事における配送拠点等の防災拠点化」を同時に実現させ、新たな都市物流・グリーン物流のモデル構築を目指す。環境省の補助を受け、今年度中にマスタープランを策定する。
初めての検討懇話会を12月8日、石狩事業所で開催し、同事業の概要と目指す姿の共有化を図った。
温度管理ができる高機能自販機(マルチ・ベンダー)を都市部のオフィス等の空きスペースに配置し、配送車両(バイク・軽車両)をEV化するとともに、配送拠点をエネルギーステーション化する取り組みを進める。コロナ禍でニーズが高まる非接触型の流通の普及も後押しする。
全温度帯のマルチ・ベンダーへの商品配送に「バッテリー交換式」の電動車両と電動リフトを活用することを計画。配送拠点に太陽光発電システムを導入し、車両へのエネルギーをまかなう。
また、大規模災害などの際には、交換式のバッテリーを避難所等に貸出すなど、地域の非常用電力供給施設としての運用を目指す。
ただ、車両は「バッテリー交換式」とすることが補助の要件となっており、現状、商用で活用できるバッテリー交換式の四輪車が国内にないため、事業化に向けては、この普及・開発状況が課題となる。
マスタープランの策定は、環境省が今年度から推進する「配送拠点等エネルギーステーション化による地域貢献型脱炭素物流等構築事業」の「物流×エネルギーセクターカップリング型ビジネスモデル検討事業」に採択され、「マルチ・ベンダー向け多頻度小口のe配送拠点に係るマスタープラン策定事業」として、補助を受けて行うもの。
検討懇話会は、「e配送拠点マスタープラン策定検討懇話会」として組織し、同社と環境コンサルのH&A環境計画(東京都世田谷区)が事務局を務め、北海道大学公共政策大学院客員教授で地域研究工房代表理事の小磯修二氏が委員長に就いた。このほか、委員として石狩市企画経済部企業連携推進課、北海道電力総合研究所、オブザーバーとして札幌市危機管理対策室が参画している。
今年度は、「マルチ・ベンダーの需要」「EV・バッテリー交換システムの開発状況」「平時・有事における運営計画」「CO2削減効果」など事業の具体的な形や採算性を検討してマスタープランを策定し、事業性・収益性に一定の見通しがついた場合、来年度以降、バッテリー交換式のEVや各種設備を段階的に導入していく予定。
検討懇話会の小磯委員長は「物流は北海道の経済を支えるインフラであり、今回の事業は平時・有事の双方に役立つスマートな取り組みであり、本当の意味での強靭化につながる。この新しい仕組み構築のお手伝いをしたい」と述べた。
斉藤会長は「バッテリー交換四輪車の開発状況など手探りの部分も多いが、持続可能な経済を目指す上で、我々に何ができるのか、目線を高く持ち、マスタープランの策定を通じて考えていきたい」と話した。