北海道物流人倶楽部 10周年記念例会 「第1回物流フォーラム」開催 「北海道の物流を考える」

北海道物流人倶楽部(斉藤博之代表幹事、北海道物流開発)は7月25日、札幌パークホテルで第60回例会を開催した。10周年を記念して「第1回物流フォーラム」として講演とパネルディスカッションを実施、「北海道の物流を考える日」の第一歩と位置付けた。道内外から物流関係者およそ60人が参加した。

日本物流学会会長の齊藤実神奈川大学教授が「これからの物流〜物流危機の進展と物流課題への取り組み」と題してオンラインで基調講演。コロナ禍以降のトラック運送業界が荷動き、運賃水準、収益面、人材不足のいずれの面でも低迷が続くとデータで紹介し、「2024年問題への対応が求められ、運賃値上げが必要だが、現状では大きな課題のまま。荷主は今後、輸送の制限や物流コスト高騰など物流危機に直面するため、『輸送を変える』取り組みが求められている」などと述べた。

パネルディスカッションでは、斉藤代表幹事、齊藤教授に加え、物流ジャーナリスト倶楽部の森田富士夫氏、三菱商事物流開発部の櫻井進悟プロジェクトマネージャー、丸吉ロジの吉谷隆昭社長が登壇、「物流の現状と今後について」をテーマにそれぞれ問題意識や取り組みなどを報告した。

森田氏は「年間60万人以上の人口が減り、人口の偏在も顕著な時代。生活必需品を隈なく行き渡らせるには、従来と同じ物流のやり方ではコスト的に行き詰まる。物流のリソースをみんなでシェアする共同化が必須であり、複数の同じようなフローの仕事をまとめることが必要となる。過疎化と一極集中が進む北海道で物流を持続可能なものにするには、行政、荷主、一般の道民を巻き込んで議論をしていくことが重要」との方向性を示した。

櫻井氏は「物流における競争領域と協調領域を見極め、限られたキャパシティをみんなで活用する局面に来ている」と同様の意見を述べたほか、2024年問題への対応としてデリバリーの見直しを行う荷主が増えており、「拠点の再配置が全国で起きている」と話した。

齊藤教授は、トラック業界が苦戦している大きな要因は「多重下請け構造」だと指摘し、「規制緩和により中小零細事業者の参入が増え、過当競争を強いられる産業構造となった。米国ではトラック事業者同士の仕事のやり取りは規制されており、日本でもこのように改めていくことが必要。ただ、自社で荷主を開拓できない事業者が多く、実際に規制するのは困難。荷主とダイレクトにつながる『マッチングサービス』の活用などが有効」と述べた。 

吉谷氏は、自社で進めている「輸送と荷役の分離」「シート掛け不要の特殊なシャーシ導入による生産性向上」「人材の多能工化と育成プログラムの運用」といった取り組みを紹介し、「今後もモーダルシフトを拡大するなど、生産性を高める余地は大きい」と述べた。

斉藤代表幹事は「2024年問題は『モノが届くことが当たり前ではなくなる』という時代の入り口となり、人口が広域に分散し、過疎化が進む北海道ではそれがより顕著となる。今回の議論で、今後の北海道の物流に一石を投じたと捉えている。あえて言えば、『答えがない』点が今回の答えであり、各自が『北海道の物流を考える』という意識を持ち帰ってもらいたい」とまとめた。

また、同倶楽部の10周年に際して「もともと私が宮城物流人クラブの200回目の例会に参加し、『北海道でもこのように『物流』をキーワードとして、様々な立場の人が集まり、出会える会合があれば』と考え、8人の発起人により10年前にスタートした。今回は原点である『北海道の物流を考える』ということに力点を置き、物流フォーラムを開催した」と述べ、「今年度は12月に札幌商工会議所と連携して第2回フォーラム、3月に小樽商科大学と連携して第3回フォーラムを開くことを計画している」と案内した。

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