北海商科大学で6月29日に行われた「物流システム論」のカリキュラムの一環として、サッポログループ物流東北支社(名取市)の諸岡知尚支社長が「サッポログループを取り巻く物流環境と今後の取り組み」と題し、約3時間に渡って学生に向けて講義した。「物流システム論」は相浦宣徳教授が担当し、物流の実務家や行政の担当者などによる講演を積極的に行っている。学生8人加え、物流企業や行政機関からも7人が聴講した。
諸岡支社長は、規制緩和後の運送業界の流れや基本的な物流用語・概念について説明し、「過当競争と取引関係の多層化が進んだことで運送会社の収益とドライバーの労働環境が悪化し、構造的なドライバー不足に陥った。荷主と実運送会社との距離が遠くなり、『伝えたい情報が思うように伝わらない』といった連絡体制が十分構築できないことも珍しくない。また、タテの連携は強固だが、異なるサプライチェーン間のヨコの連携が出来ず、効率的な物流にとって課題となっている」と述べた。
2024問題については「課題の多くがドライバーの確保と長距離輸送への対応」とし、「東北エリアでは現在、配送距離を縮めるために物流拠点を設ける動きが活発化しており、今後はドライバーだけではなく、倉庫で働く人の確保も重要な課題となる。北海道では、貨物が集中する道央から遠く、人口密度が低い道東や道北エリアなどにどのように運ぶかが問題だが、東北のような拠点整備の動きは目立たない。北海道では2017年よりビール4社による共同配送を行っているが、扱う貨物の量はまだ一部であり、ビールのサプライチェーン全体として考えていく必要がある」と解説した。
また、サプライチェーンの全体最適の重要性と難しさについて強調。「店舗は欠品させず、かつ、在庫を持ちたくないが、物流はトラック満載で一度にまとめて届けたい。それぞれの立場での最適が相反することとなり、サプライチェーンの全体最適を考える必要があるが、『必要な時に必要な量だけを運ぶこと』や『部門をまたいだ意思決定』を誰が適切にできるかというと、これが非常に難しい。物流では100%の正解は難しく、状況に応じて日々、最適であろうと応用を繰り返している」と説明した。
「必要な人材の確保、メーカーとの連携、届け先を巻き込んだ全体最適な需給コントロールなど、今やっている物流サービスを将来にわたって持続可能にすることを考えている」と述べたほか、札幌グループで進めているDXや人材育成の取り組みを紹介した。