ビジネスセミナー「食料流通備蓄の事業化とその効果」 雪冷倉庫で物流効率化のメリット紹介

札幌商工会議所は10月10日、北海道経済センターで「食料流通備蓄の事業化とその効果」と題するビジネスセミナーを開いた。食料流通備蓄事業化準備会が後援した。
雪冷倉庫を活用し、道内で農産物を貯蔵することで「出荷の調整」「輸送の平準化」「農産物の加工により付加価値を高める」「ものづくり産業への取り組み活発化」などが見込める「流通備蓄」の意義や効果などを周知するもの。
美唄市長の髙橋幹夫氏、日本データサービスの川合紀章副社長が講演した。
  
高橋氏は「食料備蓄について美唄市の取り組み〜見方を変えて味方に…利雪で街づくり」と題し、「美唄市では年平均8メートルの雪が降り積もるが、この『やっかいもの』を『自然エネルギー』として活用する『利雪』の研究を平成9年から進めている。現在は市内で12カ所の雪冷房施設が稼働している」と紹介。
農産物の貯蔵施設、マンション、データセンター、利雪加工研究施設など同市で進められている雪冷房の事例を活動成果として説明し、「道路の除排雪やデータセンターの排熱を活用し、食料備蓄とともに、植物工場や陸上養殖などの産業が通年で行うことができる」と示した。
「雪冷倉庫に農産品を貯蔵し、需要に応じて出荷することで、道産品の物流効率化や付加価値向上につながる。また、排熱利用で冬期の農業が可能になるほか、海産物の養殖を進められる。これにより内陸の美唄市に漁協が出来るかもしれない」と話した。

川合氏は「北海道で生産された農水産物は、収穫期の秋に大量に道外に輸送しているために輸送量の集中が生じ、繁閑差が激しく、フェリー、JR貨物コンテナとも片荷が生じており、物流コストが増大する構造にある。わざわざ高い物流コストをかけて一時期に道外に運び、需要を気にせず値崩れさせて安く売っている。産地では食品加工産業も育っておらず、北海道の農業はビジネスチャンスを失っている」と指摘。
また、トラックドライバーの不足と労働法令違反への罰則強化をはじめ、航空機の小型化による地方空港からの移出・輸出ができなくなっている現状や、JR北海道の路線維持問題などの問題を挙げ、「何もしなければ、道産の農産品をしっかりと道外に運べない状況になる」と訴えた。
こういった問題の解消のため、道内の産地や出荷拠点などで雪など自然エネルギーを活用した倉庫貯蔵を行い、季節変動の少ない安定的な出荷や需要に合わせた高価格での出荷を行うよう強調。
「これによって輸送の平準化と空車率の低下による物流コストの低減、地元での保管料確保、販売価格の上昇、食品加工産業の活性化、など多くのメリットが得られる。また、低温で備蓄した農作物は、糖度が増すなどの効果があるため、作物の付加価値を高めることにつながるほか、本州などでの大規模災害発生時には、北海道が食料備蓄の役割も担える」と多くのメリットを説明した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする