全国初・北海道で行政が「共同輸配送のデジタルマッチング」試行 物流におけるデジタルの可能性示す

北海道経済産業局は12月12日から2025年1月31日までの間、北海道農政事務所、北海道開発局、北海道運輸局、北海道と連携し、北海道における「共同輸配送のデジタルマッチング」を実施する。この期間、北海道の運送事業者、荷主企業からの参加(情報登録)を募っており、随時、登録を受け付けている。行政機関が実施主体となり「デジタルを活用した物流マッチング」を行うのは全国初の取り組み。同事業の目的について、北海道経済産業局産業部産業振興課総括係長の佐々木悠太氏、総括係の高崎りの氏に話を聞いた。

同事業では、北海道の物流効率化に向けて「誰でも無料で参加できる」形で共同輸配送のデジタルマッチングを行う。対象は、「混載」や「帰り便の手配」など共同輸配送の意向をもつすべての荷主事業者、運送・倉庫業などの物流事業者。公募により、traevo(鈴木久夫社長、東京都港区)の車両動態管理プラットフォーム「traevo Platform」の活用を決め、運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)が事務局を担う。

登録に必要なデータは「トラックの出発地・到着地」「毎月の輸送量」「車種・車格」「その他のオプション」のみ。
登録様式にデータを記入しメールで事務局に送付、発行されるアカウントでマッチング候補が検索できる。登録情報はシステム上に匿名化されて表示され、必要条件を入力すれば、マッチング候補の検索を簡単に行える。条件が合いそうな候補がいた場合、事務局に問い合わせ、候補事業者の了承の下、両事業者間でのみ事業者名を公表。その後、事業者同士で直接連絡をとり、個別に共同輸配送の実現に向けて協議・検討を進める仕組み。

北海道では、北海道開発局が主導し、運送事業者、荷主企業を集めて物流マッチング向けて「お見合い」を行う「ロジスク」というイベントを昨年度から行っており、今回の事業は「デジタルで行うロジスク」と言える。 

事業期間は1か月半あまり、年末年始の休暇を除けば1か月程度と非常に短いが、この期間に情報を登録してもらう。取り組みの結果は、来年2月に開催予定のシンポジウムで報告するほか、報告書などにもまとめ、公表する。

佐々木氏は「共同輸配送を恒常的な取り組みとして進める際には、最終的に顔の見えるアナログでのやり取りが必要になる。このための接点をデジタルなら効果的に提供できる。ただし、短期間の試行のため、登録されるデータは限定され、ビックデータにまでは至らないと思う。実際にマッチングする事例が出るというところまでは難しいかもしれない」と見通しを示す。

では、何のために事業を行うのか。この疑問に対し「期間中に得られた(登録された)データを分析し、シンポジウムや報告書などで示すことで、『北海道にはこれだけ共同輸配送の芽がある』と知っていただきたい。併せて、デジタルツール活用は、物流効率化にとって便利だということ、『物流におけるデジタルの可能性を示す』ということが大きな目的。当局だけではなく、国の機関や地元自治体など、行政が一丸となって北海道の物流に関して連携している姿勢を見せるということも一つの大きな目的」と説明する。

また、デジタルでの物流マッチングを事業として行う民間企業・団体は多数あるため、このような取り組みに行政が関わることは、「民業圧迫」にならないかという疑問も湧く。佐々木氏は「物流のマッチングや効率化はあくまで民間ベース、業界ベースで進めてもらいたい。今回の事業は物流におけるデジタルの有効性を示すことが主眼。物流のデジタル化の推進のための『火付け役』になると捉えている」と話す。

輸送に関する情報は営業上の秘密も多いが、今回は匿名性が担保された中で事業が行われるほか、事業期間の動向分析・効果検証のみにデータを使用し、第三者への開示・提供は行わない。「国の事業として活用するので、安心して情報を登録してほしい」と呼びかけている。

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