「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議」6回目会合 2年近く重要な論点進展せず

国交省と北海道は7月25日、TKP札幌ビジネスセンター赤れんが前で北海道新幹線札幌延伸に伴い生じる鉄道貨物輸送(JR函館線の函館〜長万部間)に関する諸課題の解決方策を話し合う有識者検討会議(座長・二村真理子東京女子大学現代教養学部教授)の6回目の会合を開いた。

新幹線の札幌延伸でJR北海道から経営分離される「北海道と本州を結ぶ貨物鉄道唯一のルート」である並行在来線(148㌔㍍)の扱いが課題となっており、これが廃止されると北海道と本州との在来線が寸断され、JR貨物による大量の輸送が出来なくなる。維持する場合、「毎年数十億円の維持管理費用と将来の大規模修繕費用」などの負担の方法・割合が議論の焦点となっている。

同検討会議は2023年11月にスタートし、これまで荷主や物流の企業や団体などへのヒアリングを実施。24年度中に「中間取りまとめ」を示し、25年度中に「最終取りまとめ」を提示する予定だが、延伸自体が当初予定の30年度末から38年度以降と8年以上も大幅にずれ込む見通しのため、議論の前提が変わり、結論を急ぐ必要がない状況になっている。

昨年度中に示される予定の「中間取りまとめ」の内容も未だ定まっていないなか、非公開で行われた今回の会合では、「中間取りまとめ」の案をメンバーに示し、意見を聞き取った。新幹線の札幌延伸後も「貨物路線を維持する必要がある」との結論で一致したという。

ただ、これは同検討会議がスタートする前までに開かれていた国交省(鉄道局・北海道運輸局)、北海道、JR貨物、JR北海道の担当者による「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する情報連絡会」で得た結論を踏襲するもの。国や道、JR関係者がおよそ2年前に出した内容を有識者が追認する形でしかなく、線路の保有主体や費用負担のあり方など、重要な課題について議論はほとんど進んでいない。

同検討会議は、「関係者間の複雑な利害調整」が必要なため、最終的な結論を得る目的で設置され、25年度中に結論を取りまとめる予定としていたが、延伸が先延ばしになったこともあり、今後、当初のスケジュール通りに議論を進めていくかも不透明だ。

事務局は今回、「中間取りまとめ」案の内容を会合の参加者以外には示していない。最終的な結論をまとめる時期を先送りするかについても明言を避けているが、「その可能性はある」と示唆した。

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