札幌商工会議所は3月11日、北海道経済センターで「北海道農産品の物流確保と付加価値向上に向けてー食料流通備蓄の事業化とその意義」と題したセミナーを開催、食料流通備蓄事業化準備会が後援した。
日本データーサービス執行役員副社長の川合紀章氏が物流を中心とした道産農産品の課題について、「秋に収穫し、そのまま大量に消費地に向けて出荷しているため輸送の集中による繁閑差・片荷が生じ、構造的に高コストな物流となる。また、一時期に大量出荷するため販売価格が抑えられるほか、首都圏など消費地に近い拠点で保管・加工されており、地元に産業が育たない。北海道の農業はこれまでビジネスチャンスを逃してきた」と指摘。
また、昨今「ドライバー不足と労働規制の強化」「JR北海道の路線維持問題と青函共用問題」「台風等の異常気象によるJRの交通障害」「航空機の小型化による地方空港からダイレクト輸送の激減」といった要因から、「全ての輸送モードで農産品の移出が難しくなってきている。『売りたくても運べない』といったケースも現実に起こりうる」と訴えた。
こういった問題を解決するため、農産品を秋に一気に出荷せず、道内産地や港湾などの出荷拠点で雪氷冷熱を活用して保管し、出荷の平準化を図ることで通年の安定供給を行う「食料流通備蓄」の必要性を説いた。
この事業を進めることで、「輸送の平準化による物流コストの低減、道内での保管料確保と食品加工産業の育成、農産品の販売価格の上昇など多くのメリットが得られる。また、常に一定の食料備蓄をしているので、災害時などに備える意味でも効果的」と強調。
このほか、「雪氷冷熱での保管により、糖度が増す農産品も多く、商品の高付加価値化にもつながる。道内で保管したほうが、保管料も安く、商品の競争力強化にもつながる」と指摘した。