北海道に忍び寄る本格的な物流危機

北海道に本格的な物流危機が忍び寄っている。
近年、「物流クライシス」といった問題が広く取り上げられ、こういった状況の認知は一般消費者や多くの企業の間で広まった。しかしこれは、「ネット通販の急速な拡大」と「トラックドライバーの人材不足」などが相まった、「宅配クライシス」の意味合いが強い。
今後、北海道で起こるであろう「物流危機」は、「モノが届かない・運べない」「物流費高騰の影響で商品価格が高くなる」といった多くの住民により広範な影響が及ぶ問題であり、そう遠くない時期に発生する可能性が多分にある。これは「加速度的な人口減少」「地理的構造」「第二次産業の比率の低さ」といった避けられない要因に根ざし、それゆえに抜本的な解決は非常に困難な北海道特有の問題といえ、影響は長期間にわたって続く可能性がある。物流関係者は将来に向けた具体的な対応策を今から真剣に考え、かつ、実行に向けて動きだす必要に迫られている。

道内の物流事業者は昨今、本州の大手荷主企業から「北海道にはモノを売りたくない」「北海道までモノが運べなくなった(非常に運びにくくなった)」といった話を聞くことが増えたと話す。実際、ある荷主にとっては、北海道は「販売シェアは九州の半分〜4分の1」程度であるにもかかわらず、「物流コストは九州より2割も高い」といった状況であり、北海道は既に「モノを運ぶのが大変で、かつ、モノが売れない」地域になっているという。このような話を聞く機会は近年、間違いなく増えている。

同事業者は「東京で買い物が100出来るとすると、このまま無策でいると、北海道で買い物ができるのは60くらいになり、残りの40は北海道に来なくなるかもしれない。もしくは、製品価格が大きく値上がりし、140円の製品が200円に値上がりするかもしれない。このようなことは、商品価格が安く、軽く、かさばるような『運賃負担の力が弱い』モノに顕著になる。販売シェアが低い北海道への物流費が高すぎて、製品を供給する側としては引き合わない状況になっており、供給側は、そういった地域には販売自体をやめるか、価格を引き上げるという対応になる。このような状況は来年来てもおかしくない」と話す。
北海道では今後、更なる人口減少が全国に先駆けて進む。同事業者は「そうなると、ある程度のロットを動かせる大規模メーカーの商材は残るが、中小規模のメーカーにとっては、海を渡ってまでわざわざ北海道で売ろうとは思わなくなる。販売価格が値上がりすると購入量も減り、ますますモノの動きが少なくなる。商品の少量多品種化が進み、それに物流がついていかなくなる。それでさらに『北海道まで・北海道から』の物流コストがさらに上がっていく悪循環に陥るようになる」と話す。

こういった物流コスト高騰の負担は、誰が行うのか。北海商科大学の相浦宣徳教授は「販売シェアが低い北海道に対し、首都圏等のメーカー側が負担することは考え難い。一方、北海道から移出する農産品などは、本州の消費者が負担するほど、競争力があるかはわからない。結果、北海道では『買うときは消費者』『売るときは生産者』が負担するという可能性が十分にある。近い将来、北海道でメーカーの希望小売価格が他地域より高く設定されることになるかもしれない。これはすぐそこにある問題であり、感じにくいが現実的な問題だ」と警鐘を鳴らす。

北海道の地方部でも現状では、「商品が普通に買える」「商品が普通に運ばれる」「通販では普通に送料無料(送料込み)で買える」というのが当たり前の感覚だが、近い将来、「その商品が買えるのか」「価格が現状と比べ、いくら値上がりするのか」「通販関連は送料別が当たり前」といった状況になりかねない。何も対応策を考えなければ、いつ「北海道だけ売られない商品が増える」「北海道だけ販売価格が上がる」といった事態になってもおかしくない。北海道の地方部でも安心して住み続けられる、将来を見越した物流の仕組みを考える時期に直面している。

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