UDトラックス、日本通運、ホクレン 国内初、一部公道を使用した大型トラックによるレベル4技術の自動運転実証実験を実施

UDトラックス(酒巻孝光社長、上尾市)、日本通運(齋藤充社長、東京都港区)、ホクレン農業協同組合連合会(内田和幸代表理事会長、札幌市中央区)の3社は8月29日、ホクレン中斜里製糖工場で同5日から行われている「レベル4(特定条件下における完全自動運転)技術」を用いた大型トラックによる自動運転の実証実験を公開した。

砂糖の原料となるてん菜の運搬業務を想定した走行をレベル4技術の自動運転トラックで再現。物流の現場で深刻化するドライバー不足の解消に向けたソリューションの一例を提示することを目的とした。また、実際の運搬に近い環境を再現するため、国内初となる公道を一部含むルートでの試験走行を実施、自動運転トラックの実用化へ向け一歩前進した。

実証実験には、UDトラックスの酒巻社長、日本通運の竹津久雄副社長、ホクレンの内田代表理事会長、北海道の土屋俊亮副知事らが列席。UDトラックスの酒巻社長は記念式典で「人手不足という大きな社会課題に、業界の垣根を超えて取り組んでいかなければならないと痛切に感じている。今回、商用車メーカー、物流、農業が手を組み、広大な農地を持つ北海道の協力を得て実証実験を実現させることができた」と挨拶を述べた。

3社は7月に交わした合意に基づき、8月5日〜30日にかけ、中斜里製糖工場周辺の公道から工場入口を経て、てん菜集積場、そこから加工ライン投入口へ横持ちする運搬ルートを、レベル4自動運転技術を活用し、てん菜の運搬業務の無人化を試みる共同実証実験を実施。
UDトラックスの大型トラック「クオン」をベースに開発された車両を使い、RTK-GPS(リアルタイムキネマティック全地球測位システム)や3D-LiDAR、ミリ波レーダー、操舵アクチュエーターなどの自動運転技術を駆使し、およそ1.3kmの運搬ルート(公道、舗装道路、未舗装道路を含む)を時速20kmで自動走行した。
また、悪天候や悪路などにおいてもより高い精度で自己車両の位置を測定するため、ネットワークRTK-GPSを導入。4Gで受信するRTK基地局からの補正信号を使って、GPS衛星から得られる位置情報を補正することで、誤差数センチメートルの精度を確保することができる技術であり、ネットワークRTK-GPSと自動運転技術を組み合わせることで、悪天候や高い建物の近くなどGPS信号の受信状態が悪い場所でも、高精度な自動走行が可能となる。
なお、同実験では警察庁が定めた「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」の規定に基づき、車両にはドライバーが搭乗し、不測の事態に対する有人緊急操縦態勢を確保した上で実施した。更に独自の安全対策として、公道の使用部分を閉鎖するなど万全の安全対策を講じた。

現在、年間約350万トンの農畜産物が北海道外に運ばれており、その7割をホクレンが取り扱っているが、津軽海峡を隔て遠隔地である北海道からの輸送力の確保は、極めて重要な課題となっている。ホクレンは第13次中期計画の重点方策として、「販売に必要不可欠な安定輸送力の確保」を掲げ、各種取り組みを行っている。一方、物流業界の人手不足などで運転手の確保は難しく、農畜産物の物流にも大きく影響が及んでいる。内田代表理事会長は「将来に向けた輸送力確保の新たな手段として自動運転車両の早期実用化に期待している」と述べ、農畜産物の運搬業務における自動運転トラックの活用に期待感を表した。

少子高齢化、働き方改革の推進、厳格化する環境規制、電子商取引の拡大などによる輸送需要の変化に伴い、商用車業界や物流業界では、自動運転やコネクティビティなどの次世代技術を活用し、生産性や安全性を高める取り組みが積極化している。
UDトラックスは2018年、次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin (風神雷神)―ビジョン2030」を発表。自動化の取り組みをロードマップの柱の1つとして位置づけ、2030年までに完全自動運転トラックと大型電動化トラックの量産を目指している。ダグラス・ナカノ開発部門統括責任者は「レベル4技術を反復作業が中心である大規模な限定領域で活用すれば、物流は大幅に効率化される。今回の実証実験で得られたデータを活用して、多様な物流の現場で求められるソリューションとしてのレベル4自動運転システムを開発し、ここ北の大地で農産業そして持続可能な食糧生産を支援したい。そしてさらに大規模な用途へと応用していければと考えている」としている。

日本通運は2017年、先端技術を活用し物流の効率化に取り組むため「ロジスティクス・エンジニアリング戦略室」を立ち上げ、自動運転技術を活用したトラック隊列走行、物流センターの無人化・省力化、人工知能(AI)活用の物流ソリューション、ドローンの多目的活用、トラックマッチング(求車求貨)のシステム化―などを主要テーマとして研究・開発を推進している。竹津副社長は、「これまでもお客様企業と連携、協力し様々な物流効率化に取り組んできたが、ドライバー不足は今後深刻化していく。物流事業者として、様々な業種、業態のお客様と取引きしているが、その中でも、大量の貨物を反復して同じ経路で輸送するような業務に自動運転トラックを活用することができれば、省人化や効率化が期待される。また、工場、港湾、空港などの大規模施設内は限定空間であり、運用ルールも徹底しやすいことから比較的早期の実用化が期待できる。実証実験の結果を踏まえ、今後も引き続き、具体的な物流シーンへの活用に向けて検討していきたい」と課題と今後の取り組みについて述べた。

自動運転などイノベーションを通じ地域活性化に取り組む動きも活発化しており、北海道では2016年に「北海道自動車安全技術検討会」を設置し、全国に先駆けて産官学連携のもと、自動走行に関し、実証試験の円滑化と研究開発促進のための環境整備や情報提供を行っている。自動車・部品メーカーなどが道内に持つ自動運転の試験場は全国最多の28カ所になっており、土屋副知事は「基幹産業の一つである農業、それを支える物流は、本道はもとより日本経済を支えており、自動運転技術など先端技術の積極的な活用による物流効率化の実現は、ますます深刻化するドライバー不足などの課題解決につながるものと期待されている。今後も関係機関のご理解・ご協力のもと、産業の垣根を越えて支援させていただく。引き続きご理解とご協力を賜りたい」と述べ、自動運転の実証実験を積極的に誘致し、地域課題の解決に向け取り組んでいくことを強調した。

今回の共同実証実験は、自動運転の技術的な実証および実用化における課題の抽出を主目的として実施した。UDトラックス、日本通運、ホクレンの3社は、農業の輸送効率化をはじめとする物流業界を取り巻く課題の解決に向け、今回の実験結果を検証し、各社で引き続き検討していくとしている。

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