ネット通販の拡大に伴い、これら宅配業務を取り込むことで全国的に活況を呈している軽貨物業界。北海道でも、アマゾンが札幌市で軽貨物の個人事業主と直接契約を行う「Amazon Flex」をスタートさせ、ドライバーの募集を始めていることに加え、楽天も配送サービス「Rakuten EXPRESS」の対象エリアを10月から札幌近郊に拡大した。EC大手が北海道での物流網構築強化に本腰を入れたことで、道内の軽貨物事業者からは危機感を示す反応が多く聞こえてくる。
「Amazon Flex」では札幌市での月額報酬例として、「2時間程度の1ブロック3500円 x 1日5ブロック x 22日=38万5000円」と示している。額面通りなら、「時給1750円」、「週休2日で1日10時間程度配送すると、38万円以上の売上」が確保できることになる。
また、「Rakuten EXPRESS」はスタート時に「1日1万7000円保証」でドライバー採用に動いた。これは「荷物は1日60~65個」程度で、「荷物が少なくても金額が下がらない」という条件での募集だった。
これらの動きにショックを受ける道内の軽貨物事業者は少なくない。
「(時給1700円を超える)Amazon Flexをやりたいというドライバーの声はかなり出ているが、すぐに対抗できるだけの金額は支払えない。多くのドライバーが持って行かれる危機感がある」(札幌市の事業者)、「稼ぎたいドライバーに対し、当社の配送をメーンにし、余った時間をAmazon Flexに充ててもらうというのは恐らく難しい。Amazonをメーンにし、余った時間にこちらを手伝ってもらうというケースがふえるのではないか」(同)、「当社では到底出せない金額を示されている。首都圏などでは、宅配を担当するドライバーに1日2万円程度を支払っている事例は珍しくないと聞くが、とても北海道価格ではない。軽貨物ドライバーへの支払い運賃の相場が上がってしまうことを懸念している」(同)、「北海道に進出してくる大型案件は、荷主が本州での軽貨物事業者との繋がりを活かしてくるので、最初から北海道の事業者は入れずに分が悪い。価格も首都圏価格を引きずってくる」(同)など、同様の声が多い。
「条件的に対抗できない」という声が多い中、「当初募集をかけた条件を途中で切り上げることになり、その時に安定したBtoBの仕事を持っている地場の事業者の所にドライバーが戻って来るのではないか。そのためにも、配送品質を高く維持していくしかないが、それまでの間に力のない道内事業者は倒れてしまうかもしれない」との声も聞かれる。