工藤商事(工藤英人社長、夕張郡)は1月末からWEB会議サービス「Zoom」を活用したIT点呼を実施する予定だ。
1月22日に「IT点呼に係る報告書」を札幌運輸支局に提出し、受理された。
工藤社長は「専用の機器やソフトを使わなければ、IT点呼が認められないと思っている事業者は多いはず。Zoomなど特別に費用をかけずにIT点呼ができると知ってもらいたい」と話している。
これまで本社のある栗山町で8人ほど、車両基地のある札幌市白石区で10人ほどのドライバーに対して対面点呼を行っていたが、深夜・早朝の点呼など一部をIT点呼に振り替える。
同社は本社で平成23年に、札幌営業所で同28年にGマークを取得、長くIT点呼を行える環境だったが、「専用機器の導入に多額の費用がかかる」ことを考慮し、二の足を踏んでいた。
このような中、コロナ禍によりZoomを活用する機会が増えた。「コロナ禍の1年ほど前より、WEB会議は行っていたが、とりわけこの1年で頻繁にZoomを活用するようになった。対外的な会議のみならず、外部講師に依頼している社内研修にもZoomを使い、全く問題がなかった」。
そこで「Zoomなど極めて安価なシステムでも、専用機器と変わらない形でIT点呼ができるのでは」と考えが及び、7月頃に北海道運輸局に照会した。国交省本省への照会を経て、数ヶ月後に「可能である」との回答を得た。
「IT点呼は、国交大臣が認定した専用の機器やソフトがなければ行うことができないと思い込んでいたが、誤りだった。この認定とは、『補助金を受けることができる』という意味合いだと説明を受け、私も全く知らずにいたが、多くの事業者も勘違いをしているのではないか」とする。
点呼執行者側とドライバー側の双方にカメラ・マイクスピーカー付きのPCを設置。PCにデータが保存できるアルコールチェッカーを活用し、このデータをオンラインストレージサービス「Dropbox」にリアルタイムで保存する。また、デジタコの免許証リーダーを活用するほか、不具合や操作不備などがないよう、リモート接続ツール「TeamViewer」も活用、点呼執行者がドライバー側のPCに遠隔で入り、操作を手伝える体制になっている。
いずれも管理やコミュニケーションのツールとして従前より使っていたため、「IT点呼にかかる初期投資はほとんどゼロ」だという。
「早朝の出庫時などは、どちらかの拠点に点呼執行者がいれば問題がなくなる。ドライバーもこの1年でZoomに慣れており、運用に問題はない。時間外労働の上限規制の一般則が施行された中、管理者の働き方改革のみならず、コスト削減もはかれる」としている。
北海道運輸局自動車技術安全部保安・環境調整官では「一概にZoomだからいい・悪いという訳ではなく、画像の解像度やアルコールチェックの運用体制など、個別のケースによって問題がないかなどを判断する」とするものの、「北海道で同様の事例は把握していないが、ZoomでのIT点呼は可能」との判断を示している。