丸富通商(髙野基緒社長、北見市)は道内の金融商品取引業者とタッグを組み、北海道で初となる「運送用のトラックを活用したファンド」の組成に協力した。これによって調達した資金を原資として、短期間で大規模な増車をし、コロナ禍においても大口の新規案件受注につなげた。
このファンドは、ノースエナジー(小松敬社長、札幌市中央区)が昨年10月に組成した「CV(Commercial Vehicle)ファンド1号」。物流現場で稼働するトラックが「投資対象の金融商品」として運用されるものだ。
丸富通商は、トラクタヘッド、シャーシ、ユニック車、冷凍車など幅広い種類の車両44台を約2億5000万円で同ファンドに売却、この車両はリースバックしてそのまま活用しつつ、売却益を新規の設備投資に充てた。
高野社長がCVファンドの情報を得たのは2019年5月。「北海道初の運送用トラックによるファンド組成」の計画を知り、ノースエナジーとコンタクトをとり、1年以上に渡って調整を進めた。
「オフバランス化による財務改善という側面もあるが、何より道内初の試みであることに興味を持った。また、銀行やリースではない新しい形の資金・トラックの調達・運用方法としても面白そうだと感じた」とし、「ノースエナジーは一生懸命動いてくれ、時間はかかったがファンドが組成できてよかった」と振り返る。
「車両をリースバックするので、『資金調達が出来ない会社が高い金利で手を出す』という悪いイメージを持たれがち。周りからも『どうして』という反応が多かった」とし、「実際に当社が活用してるリースよりも、金利は高くなった」と話す。
しかし、それを上回る大きなメリットがあると強調する。「固定資産として一度社内で眠っていた車両によって、多額の資金調達ができた。あわせて、車両等の保有資産をいかに有効に運用するかという意識が高まった。償却済みの車両でも、新規の設備投資の原資という『活かせる資産』となり、ありがたかった」と説明。
実際にファンドへの売却益を見込み、特殊な低床トレーラ12台を一気に導入、大口の輸送案件の受注につなげた。
「このような投資ニーズがあることは知っていたが、実際に取り組んで勉強になった。運送業界でもファンドによる資金調達・車両運用のスキームがより理解され、普通になっていけば、金利も下がってくる余地がある。創業間もないところ、猛スピードで事業拡大を考えているところ、財務改善を考えているところには特に有効だと思う」としている。
ノースエナジーの森尚樹専務は「今後も同様のファンドの組成を考えている。成長意欲が強く、積極的な設備投資を考えている運送事業者に、資金調達のひとつの手段としてCVファンドの活用を検討してもらいたい。『ビジネスチャンスを逃したくない』『成長のスピードを求める』『積極的な投資を考えている』といった事業者にはとりわけ有効なスキームとなっている。CVファンドを通して、運送業界に新しい風を吹き込んでいきたい」としている。