日高地域物流実態調査報告書「 地域の流通システム崩壊」警鐘鳴らす

北海道開発局は5月末に「日高地域物流実態調査報告書」を発表した。
地方部の物流実態等を把握し、道内各地域へ物流効率化の取り組みをより一層展開していくための基礎資料とするもの。浦河町、様似町、えりも町、新ひだか町の4町を対象とした。

同地域は、狭長に展開している地理特性を持ち、突端部のえりも町は札幌市から約210㎞の距離、道央圏とのアクセス時間を要する。また、道央圏と連絡する幹線道路は日高自動車道、国道235号、336号のみで、道路のリダンダンシーが脆弱。野菜、花き、昆布、さけ、つぶ類など種類に富んだ付加価値の高い農水産物が生産され、品目ごとの輸送条件が多様なことが特徴。

同地域を輸送エリアとしている物流事業者7者、地域の荷主となり得る事業者11者、農協3者、漁協2者、地域の商工会等4者に対し、「地域から出る物流」と「地域に入る物流」の双方に着目してヒアリング。主要取扱品目、荷動きの現状、物流に関するニーズ、物流に関する困りごと、物流効率化に向けた取り組みなどをそれぞれ調査した。

調査により把握した物流実態と地域物流における「困りごと」をまとめると、①「日高地域へ入荷する荷主」は「重い運賃負担」「サービス水準(納入回数など)の低下」「流通システム(自前の調達)の機能の脆弱化」、②「日高地域から出荷する荷主」は「重い運賃負担」「サービス水準(温度管理など)の低下」、③「日高地域へ入荷する物流事業者」は「地域需要の縮小」「輸送活動継続の困難さ(拘束時間・採算性)」「時間指定により輸送スケジュールに余裕がない」「帰り荷確保が困難」、④「日高地域から出荷する物流事業者」は「地域全体の物量(漁獲高など)の減少」「輸送活動継続の困難さ(拘束時間・採算性)」「帰り荷確保が困難」ーとなった。

同調査では、こういった困りごとがスパイラルとなり、地域物流におけるサービス水準の低下を受け入れる「諦め感」が漂い、「このままでは、地域の生活を支える流通システムが崩壊するおそれがある」と警鐘を鳴らした。

望まれる形として、「諦め感」から、「このままでは地域においてモノが運べない、運ばれない」といった「危機感」へ意識を転化し、「地域における自発的な連携の取り組みへ繋げていくことが望まれる」と言及、入荷する荷主、出荷する荷主、入荷する物流事業者、出荷する物流事業者が「地域物流の危機意識や課題を共有し、既存の輸送網を 活かした効率的な輸送方法を検討することが肝要」と示した。

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