日本財団(笹川陽平会長、東京都港区)は、2月6日から7日にかけて、商船三井フェリーが運航する大型カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」の無人運航の実証実験を苫小牧から大洗まで行い、航行に成功した。
日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環で、約750㎞にも及ぶ長距離、約18時間もの長時間航行の無人運航の実証は世界初。同プロジェクトで開発された、自動離着桟システムや、陸上モニタリング用のAR(拡張現実)ナビゲーションシステムなどは、船舶の安全航行や船員の労働負荷低減に寄与することが期待される。
日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」は、2020年2月より5つのコンソーシアムと共同で、無人運航船の開発に取り組んできた。今回、無人運航船の実証実験に成功したのは、大型カーフェリー「さんふらわあ しれとこ」。同船に自律操船システムを搭載し、無人運航の実証実験を行った。
大型カーフェリーはモノと人を同時に運ぶことができることから、国内の物流において重要な役割を担っており、特に北海道と関東の物流においては海運が8割以上を占めている。一方、国内の旅客船の船員は2000年以降、約1万人から約7000人と20年間で3割減少し、加えて一回の航行が長時間となる大型カーフェリーは、船員の労務負担も課題となっている。今回長距離かつ長時間での無人運航船の実証実験が成功したことで、船員の労務・作業負担の低減や、安全性の向上、オペレーションコストの低減への貢献が期待される。
「さんふらわあ しれとこ」は、苫小牧から大洗までの約750km、約18時間の無人運航を行った。海上を航行する他船の検出には、従来のAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加え、可視光カメラと夜間にも対応した赤外線カメラを利用。これらのセンサーやカメラで捉えた情報は、AI学習によって他船として認識している。
また、他船の避航では、衝突回避のためのアルゴリズムを開発し、避航操船を行った。
陸上での監視も必要なため、AR技術を活用し、船上からの映像に各種情報を重畳表示したARナビゲーションシステムの開発も行われた。
日本財団の海野光行常務理事は「北海道と関東との間の物流の約8割が海上輸送によるものであり、苫小牧から大洗という本航路は、物流の重要航路と認識している。実証実験の成功をスタートに、今後長距離・長時間を航行する大型フェリーにおいて無人運航技術が利用可能となれば、こういった重要航路における船員負担の軽減に大きく貢献できるものと期待している」とコメント。
商船三井の山口誠執行役員は「北海道苫小牧港から茨城県大洗港までの約750㎞、18時間にわたる無人運航船の実証実験を行うのは、世界初の要素となる。船員不足の解消やヒューマンエラーの削減のためにも、今後も技術開発を続けていく」とコメント。