流通サプライチェーンにおけるデジタル通貨を活用した実証実験 ツルハHDが参加

ディーカレットDCP(村林聡会長兼社長、東京都千代田区)は5月31日、事務局を務める「デジタル通貨フォーラム」の「小売り・流通分科会」において、小売企業とメーカー・卸売間での取引に伴う決済業務に、デジタル通貨DCJPY(仮称)を活用する実証実験を行うと発表した。
インテック(北岡隆之社長、富山市)、ツルハホールディングス(鶴羽順社長、札幌市東区)、日立製作所(小島啓二社長、東京都千代田区)が実施企業として参加、6月9日より実験を開始する。

同実験を通じ、企業間での受発注から支払いまでの一連の商取引に、ブロックチェーンを使ってデータの真正性を担保しながらシステム上で完結し、サプライチェーンに関わる業務の効率化、高度化に向けた効果検証を行う。

小売流通業界では、メーカーや卸売との商取引において、発注書、納品書、請求書などを企業間で電子的に交換するEDIが普及する一方、受発注システムは企業ごとに存在するため、請求書の確認や支払いにかかる事務処理は人手を介して行っていた。
また、日本の特性として、業界・商品ごとなどで独立して発展してきた商慣習が広く根付いていることにより、社会全体の最適化やビジネス環境の急激な変化への対応が遅れやすく、デジタル化によるシームレスな商取引の確立は社会的要請と言える状況だった。

このような背景のもと、同分科会では、小売企業と卸売間において商品受領の情報連携を契機にデジタル通貨による支払いを実行し、決済処理の自動化と付随する決済業務の効率化に資する結果が得られるかを確認するため、同実験を実施する。

同分科会では、小売流通分野における商取引の効率化・高度化に向け、納品管理や物流など様々な先行事例を共有しながら、同分野におけるデジタル通貨を活用したユースケースの検討や、スマートコントラクトを適用できる業務の検討などを行っており、今回の実験では、「小売・卸売の企業間における流通BMS(EDIサービス)を用いた商取引」において、「受発注から支払いまで一連の流れをデジタルで完結」することにより、主に「商品受領後の資金決済業務における効率化」の検証を行う。

具体的には、担当者の負担となっている「書類の照合・確認などの作業」に対し、EDI とブロックチェーンを連携した環境上で、全ての取引データの真正性を担保した上で共有し、「デジタル通貨を使って決済・送金を自動化」することで、一連の流れをデジタルで完結させる。

同実験は、「商取引のデジタル完結による業務効率の効果を定量的に検証」するとともに、「連携環境を構築・活用する上での技術的な知見を蓄積」することを狙いとして行うもので、商流から金流への流れを自動化するデジタル通貨の有用性の確認や、その基本機能の検証、技術的課題の整理などを行う。

インテックは、受発注データのマッピング・データ変換を行うためのEDIサービス、API連携プラットフォームの提供を行う。
ツルハホールディングスは、小売事業者として、商品の発注から入荷・検品・受領まで一連の商取引のステージおよび関連データを協力企業とともに提供する。
日立製作所は、ブロックチェーン基盤の提供およびデジタル通貨DCJPYと連動した決済処理のためのデータを作成する。
ディーカレットDCPは、支払い決済に利用するデジタル通貨DCJPYおよび二層構造デジタル通貨プラットフォームによる実証実験環境を構築・提供する。

インテック常務執行役員情報流通基盤サービス事業本部長の飯沼正満氏は「商流EDI(受発注)と金流EDI(資金決済)の連携は解決すべき課題のひとつ。この度の実証実験を通して、デジタル通貨を活用した新しいサービスの社会実装に向けた活動をより推進していけると確信している」とコメント。

ツルハホールディングス執行役員経営戦略本部長兼情報システム本部長の小橋義浩氏は「日本の小売業は、この40年来欧米に習いながら進化・発展してきたが、世界的に見ても、さらに国内他業界と比べても、その生産性は低く、小売業界が抱える大きな課題の一つであると認識している。加えて、多様化する消費者ニーズ、変化する購買行動に、スピードを以って対応することが必須。それを解決するには、生産性を下げてしまうムダな競争領域を協調領域化させ、社会インフラへと変化させることにより、ムダな不効率を排除する必要がある。この度の実証実験は発注をトリガーとして決済の自動化を目指すが、更に今後、小売業の様々な業務プロセスが協調領域化し、スマートコントラクト化していくことを期待している」としている。

日立製作所マネージドサービス事業部デジタルサービス本部 本部長野鈴木肇氏は「今回の実証実験はサプライチェーンへのブロックチェーン技術の活用可能性を検証する点で大変有意義であり、日本の商取引の高度化に貢献することを確信している。今後もサプライチェーンを含めた様々な事業領域で協創していく」としている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする