エア・ウォーター(白井清司社長、大阪市中央区)は10月18日、家畜ふん尿由来のバイオガスに含まれるメタンを液化バイオメタン(LBM)に加工するセンター工場の建設を終え、同13日にLBMを初出荷したと発表した。
今後、出荷先であるよつ葉乳業十勝主管工場において、液化天然ガス(LNG)の代替燃料として利用する実証試験を行い、一連のサプライチェーンモデルの構築に取り組む。
環境省が実施する「令和3・4年度 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において優先テーマとして採択された日本初の取り組み。サプライチェーン全体における温室効果ガスの削減とともに、家畜ふん尿に起因する臭気問題などの対策としても期待されている。
同社は、環境省の実証事業の枠組みの下、2021年5月より、家畜ふん尿由来バイオガスの捕集・輸送システムの確立や、バイオガスをLBMに加工するセンター工場の建設を進めてきた。この度、純度99%以上のメタンが製造可能となり、同工場からLBMを初出荷した。
同実証事業において製造するLBMは、カーボンニュートラルなエネルギーで、一般的なLNGの90%程度の熱量を有する。また、酪農が盛んな地域の未利用資源である家畜ふん尿を原料とするため、持続可能な国産エネルギーでもある。このため、LBMの利用は、既存LNGサプライチェーンの脱炭素化にもつながる有効な解決策となる。
LBMのサプライチェーンは、①家畜ふん尿由来のバイオガスを捕集し、センター工場へ輸送する、②センター工場にて、極低温のLBMに加工後、タンクローリーで近隣の工場(よつ葉乳業)へ輸送する、③LBMを工場のエネルギーとして消費する―といった流れで運用していく。
今後の実証試験では、LBMの品質実証を行うと同時に、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減効果の検証を進める。センター工場で1年間に製造するLBM全量(約360㌧)がLNGの代替として消費されるものとすると、サプライチェーン全体でのCO2排出削減量は、年間7740㌧、温室効果ガス削減率は60%以上となる見込み。
「バイオガスの有効利用を模索する酪農家と、再生可能エネルギーを活用したい需要家のニーズを繋げることで、新しい地産地消のエネルギー供給モデルを構築し、早期の事業化を実現していく」としている。