北海道開発局は12月4日、NCO札幌で北海道独自の物流マッチングイベント「ロジスク」の一環として、初めての「道央ロジスク」を開催した。
「ロジスク」とは、物流事業者や荷主が共同輸送や中継輸送の実現に向けて話し合う場を行政が主導して設ける取り組み。行政機関が物流の連携に向けて「お見合いの席」をセッティングするイメージだ。
北海道開発局が今年7月に提唱し、同局が中心となり運営する共同輸送・中継輸送実装研究会を通じて10月に旭川市で「道北ロジスク」を初めて開催、15社が参加した。今回は「道北ロジスク」の続編として、道北で生産された農水産品等の受け手側となる道央でのロジスクを実施、物流企業と荷主15社33人が参加、この他オブザーバーとして参加した企業や事務局など62人が参加し、共同輸送・中継輸送の実施に向けて協議を行った。
参加企業は6つのテーブルに分かれ、4回の交代を繰り返しながら、マッチングのための情報交換を実施、共同輸送や中継輸送の可能性を探った。
参加者からは「すぐにマッチングには至らないが、これから進めていければ」(北見通運の伊藤英樹取締役)、「このような場は有意義で、回を重ねて情報交換を深く行えば協調できるところも分かってくる。我々が必要としている補助制度や法令の改正の話も出てきたので、民間同士だけではなく、民と官とのディスカッションの機会を設けてほしい」(北海道物流開発の佐藤忠新規事業開発部長)、「何回も話をしていくうちに『できるかもしれない』という部分が出てくる。引き続き情報を取りながら話し合いを続ければ、物流課題の解決につながることもある。この機会を大切にしたい」(イオン北海道の石田将物流改革マネージャー)といった声が聞かれた。
共同輸送・中継輸送実装研究会の髙橋清座長(北見工業大学地域未来デザイン工学科・社会インフラ工学コース教授)は、「ロジスクの取り組みは継続が重要。これをきっかけに情報共有をしながら、出来ることから取り組みを始める必要がある。2024年度に向けて、少しでも物流の協調が進むよう期待している」と述べた。
同研究会では今後、具体的な取り組みに繋がりそうな案件をフォローアップし、来年2月にロジスクの進捗状況の発表会を開催する予定。北海道開発局開発監理部開発調整課の三岡照之開発企画官は「スタートしてまだ数カ月だが、ロジスクの種がどれだけスクスクと育っているか報告したい」としている。
ただ、課題も見えてきた。今回の道央ロジスクは、1000社を超える札ト協会員に共同輸送や中継輸送の意向を聞くアンケートを通じて参加を募ったほか、各所でアナウンスを行ってきたものの、参加企業は荷主を含めてわずか15社にとどまった。
荷主、物流子会社、既に全国ネットワークを持つ物流大手を除けば、純粋な道内の物流企業の参加は5社程度。「第三者的な立場の行政機関が呼びかけたマッチングの場」として、「参画しやすい触れ込み」でスタートしたロジスクだが、1000社以上にアナウンスをしても、実際に参加した企業は1%にも満たないのが現状で、その広がりは非常に限定的だ。
物流子会社や大手企業は、自力で共同輸送や中継輸送に着手しやすい傾向にあるが、自力では進めにくい中小企業は、ロジスクに関心を示していないように映る。
「積載率の向上や長時間労働の解消に繋がりうる共同配送や中継輸送のマッチングの場」としてだけではなく、参加者からは「他社も同じ悩みを抱えていることがわかった」「普段付き合いのない企業と話ができた」「他社の取り組みを聞けた」など、有意義だったとの声も聞かれる。全国的にも行政機関がこのように「後方支援」をしてくれるのは珍しいが、道内の運送業界に「響いていない」のが残念だ。