室蘭ガス(末長守人社長、室蘭市)は11月24日、同社を代表企業として、室蘭市(青山剛市長)、室蘭テクノセンター(栗林和徳理事長、同)、室蘭工業大学(空閑良壽学長、同)、産学連携機構九州(前田真社長、福岡市早良区)、大成建設(相川善郎社長、東京都新宿区)、エア・ウォーター北海道(加藤保宣社長、札幌市中央区)、北弘電社(髙橋龍夫、同)と共同で、水素の製造・貯蔵・配送・利用までのサプライチェーンを構築する実証事業を行うと発表した。
同実証事業は環境省が公募した「令和4年度既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」へ提案した「既存のガス配送網を活用した小規模需要家向け低圧水素配送モデル構築・実証事業」が採択されたもので、今年度から実施する。
同実証事業では、室蘭市が所有する祝津風力発電所で発電した電気を使い、水電解水素製造装置で水素を製造、既存のガス配送網に混載可能な円筒型水素吸蔵合金タンク(MHタンク)に充填し、需要家まで配送する。
水素供給コストの低減を目的としており、具体的には「既存のLPG配送網を活用することによる配送コストの低減実証」をはじめ、「再エネ変動に追従した水電解装置の稼働率向上によるコスト低減実証」「水素利用方法の多様化(小規模需要家へ機器を設置)による普及コストの低減実証」「水素製造時の副生酸素の有効利用(陸上養殖への利用)による水素コスト低減実証」―といった取り組みを行う。
現在、産業用分野で普及している水素配送方法は14.7MPa又は19.6MPaの高圧水素ガスボンベでの配送だが、今回は水素吸蔵合金を用いることで水素を低圧で大量かつ安全に配送することが可能となる。
これにより建物や街区、特に一般住宅などの小規模需要家への水素の普及促進を実証する。充填したMHタンクは、ガスボンベ等と同様に配送トラックに混載し、室蘭市内の水素利用場所に運ぶ。
水素利用場所として、一般住宅のほか、小規模ロードヒーティング、小規模店舗、宿泊施設、金属加工工場などを想定している。