丸吉ロジ(吉谷隆昭社長、北広島市)は来年度より、新事業として「廃油ストーブ」の製造販売を開始する。昨年12月にエコトライ(日高郡)から事業を引き継ぎ、苫小牧営業所を拠点とし、全国に向けて廃油ストーブ「eco太郎シリーズ」の販売を行う。
丸吉ロジでは「鉄の物流」にフォーカスした事業を展開してきたが、「鉄のモノづくり」にも事業領域を本格的に広げる。事業単体の収益のみならず、「多様な人材の活用」「物流案件受託の新たな切り口」といった面での効果も期待している。
廃油ストーブは、エンジンオイルなどの使用済み油を燃料とする暖房機器。廃油の回収やリサイクルの仕組みが確立されていなかった時代には珍しいものではなかったが、現在は「メーカーが全国でも数社」しかない状況で、極めてニッチな市場となっている。
エコトライは「eco太郎シリーズ」を年間200台程度製造し、全国の鉄工所、自動車整備をはじめとする各種工場、建設現場、農業や漁業の現場などに販売、自社でエンジンオイルを交換する運送業も対象だった。「宣伝をせずとも常に完売し、順番待ち」となるほど好調だったが、中長期的に事業を継続させていくにあたり、人材や製造ノウハウ、販売チャネルなどを引き継いでくれる企業を探していた。丸吉ロジは「鉄を扱い、倉庫などの設備と保管・加工のノウハウがある」ことから、両社を知る税理士が仲介をした。
吉谷社長は「7月頃に話をいただき、当初は廃油ストーブの存在自体を知らなかったが、ヒアリングを繰り返す中で、『今後も優れた製品を責任持って供給していきたい』という先方の姿勢に共感した」と話す。
また、既存事業との相乗効果も大きいと判断。「鉄の倉庫は構造上、天井クレーンが届かないデッドスペースがあり、これを活用して在庫の保管や出荷作業ができる。倉庫管理や加工、輸送拠点として稼働している苫小牧営業所を活用すれば、新たな設備投資の必要もなかった。今後、従業員の高齢化や多様な人材の確保に向けて、運転業務や倉庫での現業が難しい従業員でも、廃油ストーブ事業に携わることで、雇用の維持が可能となる。さらに、これまで接点がなかった鉄工所や物流現場へも、廃油ストーブの案内や販売を通じて、関係づくりのきっかけとなるかもしれない」としている。
「メーカーの立場となり、新たな責任も生じてくるが、『自社で値決めができる』ことの強さを感じている。費用をかけて廃棄していたオイルが、高騰を続ける暖房の燃料となるので、環境に優しく、ニーズも高まっていくと捉えている」と期待している。