NEDOは11月28日、委託事業である「CCUS研究開発・実証関連事業」の一環で開発されたCO2を輸送する船舶用カーゴタンクシステムを組み込んだCO2輸送実証試験船「えくすくぅる」が完成し、命名・引き渡し式が行われたと発表。
NEDOから委託された日本ガスライン(NGL)やエンジニアリング協会(ENAA)などが、同船による実証試験や運航などを担当する。今後、同船は試験運航後に、液化CO2の輸送実証試験を行う。
実証試験には、CO2の液化・貯蔵・荷役および船舶輸送のプロセスが含まれており、CO2の最適な船舶輸送条件を特定するため、主に同事業で建設した舞鶴市と苫小牧市の陸上基地間を温度や圧力などを変えた、さまざまな条件で繰り返し輸送する計画。
NEDOでは、「実証試験を通じて、安全かつ低コストなCO2の船舶による大量輸送技術を確立し、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の社会実装によって、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していく」としている。
CCUSは、脱炭素社会を実現する技術として国内外で注目を集めているが、CO2の排出地と貯留地・活用地が離れていることが多く、CO2を安全かつ低コストで大量に輸送する技術の確立が課題となっている。
NEDOは、2030年頃までのCCUSの社会実装に向けて、工場や火力発電所などから排出されるCO2を、貯留地・活用地まで低コストで大量・安全に輸送するため同事業を実施し、CO2の液化・貯蔵・荷役および船舶輸送のプロセスを包括した船舶一貫輸送システム確立のための技術開発に取り組んでいる。
その一環で開発された船舶用のCO2カーゴタンクシステムを組み込んだ同船が完成し、命名・引き渡し式が行われた。
同船による実証試験や運航は、NEDOから委託されたNGLやENAAなどが担当。本事業で開発したカーゴタンクに、さまざまな温度で液化したCO2を積載するとともに、圧力などを含めタンク内の状態を変更し、主に同事業で建設した舞鶴市と苫小牧市の陸上基地間を繰り返し輸送する計画。これにより、陸上基地の荷役設備や貯蔵用タンクの機能性も併せて評価し、船舶一貫輸送に最適なCO2の輸送条件を特定することで、大量輸送技術の開発につなげたい考え。
実証試験における液化CO2の低温・低圧状態(-50℃、0.6MPaなど)での船舶輸送試験は世界初の取り組みとなり、低コストでCO2を長距離大量輸送する成果が大きく期待できるものだとしている。
NEDOは、本船による実証試験を通じて、船舶による安全かつ低コストなCO2の大量輸送を実現する技術を確立することでCCUSの社会実装を目指し、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献するとしている。