首都圏の事業者で構成される物流リンク協同組合(森本正宏理事長、東京都中央区)は10月10・11の両日、北海道物流視察を実施、シズナイロゴス(伊藤功一郎社長、札幌市白石区)とセコマ(丸谷智保社長、同中央区)の物流センターなどを見学し、両社の事業展開について説明を受けた。組合員13人が参加した。
シズナイロゴスでは、物流センター恵庭、物流センター恵庭第二をそれぞれ見学したほか、同社が運営している北海道HSL日本語学校の実際の授業風景を視察した。
伊藤社長が同社の沿革や事業概要、今後の戦略について講演し、日本語学校について「当社のグローバル化と国内の人材不足への対応を見越して2年前に開校した。現在ネパール、ベトナムの両国から19人の留学生を受け入れ、授業のない時間帯に週28時間までセンターで勤務してもらっている。当初は本当に簡単な作業の手伝いだったが、現在はしっかりとシフトを組み、非常に重要な戦力となっている。物流の専門技能のある海外人材の育成を進め、将来的には、このような人材を他社へ派遣できるよう準備を進めている」と述べた。
また、センター・運送部門におけるスマホを活用したAI導入の取り組みについて説明し、「全員にスマホを貸与し、一人一人の出退勤管理、リアルタイムでの作業進捗管理、生産性管理を行っている。このデータが十分蓄積できれば、AIによってセンターでは複数拠点をまたいだ無駄のない効率的な人員配置、運送では自動配車が行える」と説明した。
セコマでは、札幌市白石区流通センターにある中核的な物流センター群を訪問。札幌配送センター、札幌リサイクルセンター、札幌チルドセンターをそれぞれ視察したほか、グループで卸・物流を担当するセイコーフレッシュフーズの堤豪気専務が講演。「健康的で美味しい物をなるべく低価格で提供しよう、というのがグループの使命。この実現に向けて、全体最適な視点で物流を構築している。グループで製造・物流・販売のサプライチェーン全ての機能を持っていることが強み」とし、柔軟な納品頻度・時間設定の運用や空車削減の取り組み、運送に関する法令勉強会・テストの実施など独自の取り組みを紹介。また、運賃について、「燃料費は日々変動するので、運送会社に負担をかけないよう実費を計算し、支払っている」と説明した。
このほか、昨年発生した北海道胆振東部地震とブラックアウトの際の対応について、「センターで大規模な荷崩れが発生したが、オーダーがあったものは全て出荷し、被災地や支援機関などに向けた災害時の物資供給は民間最大の20万個に及んだ。店舗ではそれぞれが自主的に判断してほとんどが営業、非常用発電キットでレジを動かし、ガスで米を炊いておにぎりを販売し、溶けてしまうアイスは無料で提供した」と紹介。また、現在首都圏に接近している大型の台風19号に備えるため、北海道から非常用電源150機や発電キット等を関東の事業拠点まで運んでいると述べ、「災害に対しては、事前に手を打つことで被害を回避する可能性も高まる。このような対応がとれることも、サプライチェーン機能を持つ強み」と強調した。
森本理事長(リープ、春日部市)は「非常に意義深い視察となった」とし、沢田秀明副理事長(ロジックスライン、成田市)は「関東と異なる広大な北海道ならではの物流の大変さを学べた」と述べた。