帝国データバンク札幌支店は2月15日、「2024年問題に対する道内企業の意識調査」の結果を公表した。2023年12月18日〜2024年1月5日の間、道内企業1145社に聞き、528社から回答があった(回答率46.1%)。
物流の2024年問題について73.1%の企業が「マイナスの影響がある」と回答、「プラスの影響がある」はわずか1.9%、「影響はない」は12.7%だった。特に「農・林・水産」(92.9%)は 9 割超、「製造」(83.7%)、「卸売」(83.5%)の2業界は8割超の企業がマイナスの影響を見込んでいる。また、「運輸・倉庫」(79.3%)、「小売」(78.0%)、「建設」(73.6%)の3業界も7割を超える企業がマイナスを見込んでいる。
「2024 年問題」全般に対する具体的な影響では、企業の66.7%が「物流コストの増加」を見込んでいる。これに次いで、「人手不足の悪化」(46.6%)、「人件費の増加」(44.9%)が 4割台で続いた。業界別にみると、「物流コストの増加」は「農・林・水産」(92.9%)で9割を超え、「製造」(87.2%) と「卸売」(83.5%)が8割超で高かった。 また、「配送スケジュールの見直し」は「製造」(51.2%)や「小売」(48.0%)、「卸売」(47.6%) といった主に荷主側となる業界で高かった。
物流の2024 年問題に対して、対応(予定含む)を行っている か尋ねたところ、「対応あり」とする企業は 67.0%だった。他方、「特に対応しない」企業は 22.2%となった。 「対応あり」とした企業に対して、具体的な対応策を尋ねたところ、「運送費の値上げ (受け入れ)」が46.0%でトップとなった。次いで、「スケジュールの見直し」(37.3%)や「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」(29.7%)、「運送事業者の確保」(23.4%)、DX など「業務のシステム化や効率化の推進」(15.8%)が上位に並んだ。
業界別にみると、「運送費の値上げ(受け入れ)」は「不動産」(66.7%)、「運輸・倉庫」(60.0%)で6割以上となった。そのほか、「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」は、「運輸・倉庫」(48.0%)や「製造」(38.2%)、「卸売」(36.8%)で高く、「ドライバーの確保・育成」では、『運 輸・倉庫』が52.0%と突出して高かった。
また、物流の2024年問題へ「特に対応しない」企業に対して理由を尋ねたところ、「2024 年4月以降、問題が生じた際に対応を検討する」が37.6%でトップとなり、「これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」(35.9%)が続いた。 以下、「自社だけでは対応策が検討でき ない」(28.2%)や「どのように対応すればよいか分からない」(12.8%)が続き、 2024 年4月が直前に迫っているなかであ っても、具体的な対策が見つからず、対応を決めかねている様子も表れている。
「2024 年問題」全般に対して求める支援策や政策などについて尋ねたところ、補助金や助成金など「金銭的支援」(38.3%)と答えた企業の割合が最も高く、「人材育成・確保支援」(37.7%)、「時間外労働の上限規制の猶 予期間の延長」(34.1%)、「高速道路料金などの見直し」(30.5%)が3割台で続いた。
また、企業からの「都市部よりも地方がより深刻な影響を受ける。長距離貨物の価格が上がる、届くまでの日数がかかるなどの影響が大きくなれば、地方は今より不便になり、人口がさらに都 市部に集中し、地方が廃れる要因となりかねない」(電気機械製造)、「生産年齢人口が減少するなかでの規制は正直大変。人の確保すら厳しい状況にある地方の事情をもっと理解してほしい」(農・林・水産)、「北海道地域全体が人員不足となる」(専門商品小売)といった声を紹介している。
同支店では、「2024 年問題を物流の問題に絞ると7割超の企業でマイナスと捉えている。運送費の値上げや受け入れ、スケジュールの見直しなど具体的な対策の実施を予定している一方で、問題が生じた際に対応を検討する企業も多く、2024 年4月が直前に迫るなか、具体的な対策が見つからず、対応を決めかねている企業も一定数 存在していた。物流の 2024 年問題に対し、マイナスの影響があると答えた道内企業 の割合は全国を上回っている。広域分散の北海道にとって、迫りくる2024年問題の影響は大きく、既存のサービスを維持するため、企業が様々な対応策を実施する中で、今後は現状の課題解決に資する対策だけでなく、DX などの力強い推進や新技術の開発・利活用など将来を見据えた効率化や業務改善も必要となっ てくる。政府には十分な金銭的な支援だけでなく、個社だけの対応や一部の業界だけが負担を被ることにならないような制度や体制づくり、企業の取り組みを継続的に後押しする政策が求められている」とまとめている。