衛星AISデータの活用による 2018年の北極海航路の航行実態 北海道開発局など

北海道開発局は3月26日、2018年の6月~12月(北極海航路の航行時期)における北極海及びその周辺海域での航行実態等を取りまとめたと発表した。
同局では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、北海道大学、国土技術政策総合研究所、青森県と共同で、人工衛星から取得されるAIS(船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報を自動的にVHF帯電波で送受信し、船舶局相互間及び船舶局と陸上局との間で情報の交換を行うシステム)データを活用した北極海航路の可能性を共同で検証しており、2015 年から継続的に行っている(なお、人工衛星の位置や船舶からの AIS 信号の発信状況により、 全ての航行船舶を把握できていない可能性がある)。

2018年に北極海航路(ロシア側)の東西両方の境界を横断した船舶は59航行と、前年の横断実績49航行よりも2割増加した。
このうち、北極海航路内の港湾に寄港する船舶が2017年20航行から29航行と増加しているほか、北極海横断航行のうち北極海航路内の港湾に寄港しないトランジット航行(いわゆる北極海航路を単なる航路として利用)は2017年29航行に対し30航行と微増だった。
ヤマル半島のLNG基地が2017年12月に稼働が開始されたこともあり、今回はヤマル半島へのLNGタンカーの寄港は12航行が確認され、本格的なLNG輸送が開始されたと考えられるとしている。

特徴的な船舶の航行実績を下記の通り示している。

①貨物船・タンカーのトランジット・国際間輸送の増加
北極海航路内の港湾に寄港しないトランジット航行が30航行となっているが、特に、貨物船・ タンカーに特化してみると、トランジット航行は2017年22航行から25航行に増加。このうちロシア港湾以外を発着地とし、ロシア国内には寄港しない国際間輸送については、2017 年10航行から15航行に増加している。
また、貨物船・タンカーの国際間輸送15航行のうち、13航行は一般貨物船の航行だった。これらは8~10月の間に、北極海航路を1~2週間程度で航行しており、アジア~欧州間の様々な品目の国際間輸送に北極海航路が利用されている状況であったと見られるとしている。

②フルコンテナ船の試験航行
フルコンテナ船(3600TEU、アイスクラス1A)の北極海横断航行が1航行確認された。北極海航路にてフルコンテナ船の完全横断は初めてのことであり、特段の支障なく航行したと見られるとしている。

③LNGタンカーの通航
北極海横断航行のうち北極海航路内の港湾に寄港する船舶が2017年20航行から29航行と増加。ロシア・ヤマル半島のLNG基地が2017年12月に稼動を開始しているが、拠点となるサベッタ港に寄港する船舶が2017年の10航行から15航行に増加している。特に、15航行のうち12航行がLNGタンカーだったことから、サベッタ港からの本格的な LNG輸送が開始されたと考えられるとしている。

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