北海道「多重下請け」への意識 1000社回答「肯定3割、否定3割、どちらとも言えない4割」

北ト協と札ト協は1月下旬から2月中旬までの約3週間、全道の会員を対象とした「多重下請け」に関する大規模なアンケート調査を行った。2960事業所に聞き、1070事業所から回答があったが、会員が多重下請けについて肯定的なのか否定的なのか、「はっきりとはわからない」結果となった。

全ト協は昨年3月に「多重下請構造のあり方に関する提言」を出し、「実運送事業者に支払われる運賃の低下につながる」ことから「トラック運送業界全体として2次下請までと制限すべき」との見解を示し、国交省における各種施策に反映するよう要請を行うとした。

国交省でも昨年8月から「トラック運送業における多重下請構造検討会」を開いており、「多重下請構造の是正等を通じた適正な運賃収受に向けて必要な対策を検討」するとしている。今年2月の第3回検討会では、多重構造に介在する全ての者に対し、「重層構造自体を縮減、抑制するための措置(例:次数制限)」「適正な事業運営が困難な水準での運賃による取引を減少させるための措置」などの必要性を示している。

「多重下請け規制すべし」の流れが強まってきているが、北ト協と札ト協の調査では、多重下請け構造について、「あるべき」と「あってもやむを得ない」という肯定的な回答が3割弱、「なくなってほしい」と「なるべくなくなってほしい」の否定的な回答がこれよりやや多く約3割、「どちらともいえない」が最も多く4割あまりとなった。

また、下請けが2次まで規制された場合の影響について「とても影響がある」「影響がある」が3割弱、「影響がない」「あまり影響がない」がこれよりやや少ないが3割弱となり、残り4割あまりが「どちらもといえない」と回答した。

ざっくりといえば、北海道の実運送事業者は、多重下請けが「必要(なくなると困る)」と「不必要(なくても困らない)」がともに30㌫程度、「どちらともいえない」が40㌫あまりと意見が分かれた。この結果、多重下請けが「必要と答えなかった」「不必要と答えなかった」事業所が共に7割前後となり、道内の事業者が「多重下請けを悪と捉えているのか、必要としているのか、それとも必要悪と考えているのか」が示しにくくなった。

両ト協では明快な見解を示すため、「どのような理由で『どちらともいえない』としたのか」などの点について、追加で個別にヒアリングを行って分析を進めており、新年度以降に結果を公表する意向だ。

多重下請けについて、道内の実運送事業者などから考えを聞くと、「支払い運賃の値上げの影響が中小事業者まで届きにくいので当然なくすべき」(札幌市の事業者)、「アメリカではトラック事業者同士の仕事のやり取りは規制されていると聞く。実際の規制は相当難しいだろうが、日本もそうすべき」(江別市の管理者)と否定的に捉えている意見がある一方、意外なほど「必要」「仕方ない」とする声が多い。

「零細事業者では、自社で荷主を開拓できず、何次かは分からないが下請け仕事のケースが多い。過剰に規制してしまうと、彼らを潰しかねない。結果、業界全体が困ってしまうのでは」(石狩市の事業者)、「農産物は季節的な物量の波動が大きく、繁忙期には協力会社に多く依頼せざるを得ず、『とにかく運んでくれ』となる。メーカーや小売など輸送量がある程度安定している業務を基準として、一律に下請けの規制をかけるのではなく、運ぶ荷物や地域にあったあり方があるのでは」(札幌市の管理者)との意見に加え、「仲間から『運んでくれ』『荷物ないか』との連絡があれば、どうにかしてやろうというのは当然のこと。経営にはこういった『貸し借りの積み重ね』の側面もあり、決して『儲けよう』『ピンハネしよう』としているのではない。多重取引の中には、こういう『仲間のため』の動きがかなり含まれているのではないか」(札幌市の事業者)といった見方もある。

また、アンケート結果と同様、「どちらともいえない」とする意見も多い。
札幌市の事業者は「運賃は多重下請けという構造や、取引の力関係による影響が強いことも事実だが、本質的には『需要と供給』のバランスによって決まっているはず。運びたいなら運ぶし、収支が合わないなら運ばない。荷物を出す方も同様で、安い運賃でも引き受けるところがあるなら、それが市場価格であり、誰も運んでくれないなら、運賃を上げるだろう。運賃水準を『取引の構造』に落とし込んで解決しようとしても難しいのではないか。その意味では、多重下請けは問題視するものとは思わない」と話す。

苫小牧市の事業者は「仕事を受ける際は運賃が安くなるのは嫌だが、出す際は問題なく運んでくれるなら何重の下請けであろうと気にしない。業界の構造のことを考えて経営している人なんてほとんどいない。みんなそうじゃないか」と率直な意見を述べている。

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