日本銀行札幌支店は11月22日、「道内における買い物弱者の増加を踏まえた小売業の取り組み」と題したレポートを発表。
高齢化・人口減少を背景に、日常の食料品購入等に苦労している「買い物弱者」が道内の郡部で増加している現状を説明し、道内小売業や物流に関する最近の取り組みなどを整理した上で、買い物インフラの側面からの地域の将来像を示している。
道内の小売業では、「買い物弱者の増加」を「収益機会」と捉えて郡部に新規出店し、その場合、「居抜き出店や自治体との連携による出店コストの低減」「生活用品全般への商品拡充による域内需要囲い込みと利益率の引き上げ」といった工夫がみられているとする一方、「地域に存在する買い物弱者の人数をもとに需要予測を立てているが、過疎化の進行は想定以上に急速で、過疎地店舗の運営は困難さを増している」といったヒアリング結果を紹介。
実店舗の運営環境が厳しさを増す中、道内の小売業では「宅配事業を強化」することによって、「実店舗の撤退により失われた供給をカバーする動きがみられている」と分析。
この際、物流コストの高さや配送にかかる人手不足が課題となっているが、「配送業務の効率化」や「就業環境の整備を通じた潜在的な労働力の掘り起こし」により、課題を克服しようとする動きがみられていると説明。「宅配事業の拡大にあたっては、配送を担う労働力の確保が急務。労働時間の柔軟化など、働きやすい環境を整えることで、主婦層などの潜在的な労働力を掘り起こしたい」といった声を紹介している。
また、道内の運輸業では、物流コスト低減のため、「大型物流拠点の設置による荷物の集約や各種作業の自動化」「共同集配送」「貨客混載」などにより輸送の効率化を進めていることを説明している。
道内小売店の商圏人口を推計したところ、店舗採算を需要サイドから判断する際の一つの目安となる「商圏人口(半径1㎞内の人口)1000人」を下回る店舗数は、2015年から見て2045年時点には「約7割増加」する見込みにあるとし、「郡部を中心に小売店の撤退が進み、買い物インフラの維持が困難となる可能性がある」こと、また、そうした地域では「今後買い物インフラの喪失を通じ、地域社会が衰退に向かっていくリスクに直面している」ことを示している。
「今後、小売業者における課題解決に向けた取り組みが継続し、更に、物流面でみられているような、業種や企業の枠組みを超えた事業効率化や機械化・省力化の動きが広がることにより、道内の買い物インフラ維持と、企業の収益体質強化が両立することに期待したい」としている。