日本物流学会(会長=矢野裕児流通経済大学教授)の「地域の生活と産業を支えるサステナブル物流研究会」は6月28日、今年後1回目の研究会を北海商科大学で開催した。オンラインと併用で開催し、会場に20人、オンラインで全国から約40人の研究者らが参加した。
昨年発足した同学会4つ目の研究会で、主に北海道や九州など日本の「末端地域」の物流課題を取り扱っている。物流の機能低下や物流の維持が困難といった課題が顕在化し、地域全体の「生活や産業のほそり」を招来する懸念があるというケースについて、現状や取り組み事例などを把握するとともに、改善にむけた提案を行うことを目指している。

同研究会では、物流のビジネス面よりも、「地域経済・市民生活との関わり」といった社会的な側面の研究を進めており、矢野会長は「法改正が相次ぎ、政府はさまざまな施策を進めているが、地域でどのように物流を変えていくかが重要。地方部は配送効率やネットワークの維持が課題となり、物流が段々と細くなっている。持続可能で太い地域の物流ネットワークを作り上げることを検討課題としなければならない」と述べ、事務局を担う北海商科大学の相浦宣徳教授は「北海道は物流課題が多いが、このために一方では物流効率化の先進地域とも言われている。物流課題を考えることは、次の世代にどのような地域を残していくかを考えること」とあいさつした。
北海道経済産業局総務企画部の佐々木悠太総括係長が「北海道における持続的な物流の実現に向けた取り組み」をテーマに講演したほか、富良野通運の永吉大介社長、北海道通運業連合会の河野敏幸専任理事がそれぞれ「北海道の物流の効率化・物流の維持」に向けての取り組み事例や実証実験の内容を紹介した。
佐々木氏は「今年行った荷主へのアンケート調査で、北海道では1月にトラックドライバーの時間外労働の規制により、1割近くの企業が『輸送を断られたことがある』と回答しており、これは地域全体の問題であり、今後より深刻になると実感している」とし、同局で進めた物流のデジタルマッチングの実証実験の概要と効果を紹介。今年度もより規模を拡大して実施する予定とした。
同研究会は今年度、九州や大阪などでの研究会を今後予定している。