札ト協と北ト協は8月8日、物流セミナー2025を開催し、北海道での「多重下請け構造などの実態調査事業」の結果を報告したほか、今後の方向性を3点提示。北海道では、「一律的な委託次数の制限」には問題があることを示唆した。
全ト協の「物流の2024年問題解決に向けた都道府県トラック協会等による創意工夫事業助成金」を受けて、札ト協が中心となり今年1月27日〜2月17日にかけて道内ト協会員2960事業所に向けて大規模なアンケートを行い、「北海道の地域性を考慮した多重下請け構造」に関して現状の意識や今後のあり方などを調べた。有効回答は1091事業所(回収率36・9%)。

【多重下請け賛否が拮抗】
再委託の有無について、57・6%が「他のトラック運送事業者に依頼して運送することがある」と回答、半数以上が他社に仕事を再委託していた。
「自社」にとっての多重下請けの賛否では、「肯定的な回答」が21・2%(「あるべき」が4・2%、「あっても止むを得ない」が17・0%)、「否定的な回答が30・6%(「なくなってほしい」が9・0%、「なるべくなくなってほしい」が21・6%)、「どちらとも言えない」が45・2%だった。
「社会」にとっての多重下請けの賛否では、「肯定的な回答」が23・7%(「あるべき」が3・7%、「あっても止むを得ない」が20・0%)、「否定的な回答が33・2%(「なくなってほしい」が8・8%、「なるべくなくなってほしい」が24・4%)、「どちらとも言えない」が39・6%だった。
多重下請けが2次まで規制された際の影響では、「自社」にとって「とても影響がある」(3・0%)、「影響がある」(19・8%)を合計すると22・8%。「影響がない」(13・4%)、「あまり影響がない」(26・3%)の合計は39・7%。「どちらとも言えない」は34・7%だった。
「社会」にとってでは、「とても影響がある」(4・0%)、「影響がある」(19・8%)の合計は23・8%。「影響がない」(5・5%)、「あまり影響がない」(17・1%)の合計は22・6%。「どちらとも言えない」は50・0%だった。
この結果、道内では2次までの次数制限への評価が分かれ、判断がつかない事業者が40〜50%と多くを占めていることがわかった。
【台数が多いほど多重下請けに肯定的】
多重下請けの必要性について、車両101台以上保有の事業者(21社)の38・1%が肯定的であり、21〜50台保有の事業者(208社)では37%が否定的だった。また、2次まで規制された場合の影響では、保有台数100台までは、台数が増えるほど「影響がない・あまり影響がない」と回答する事業者が多くなる傾向だったが、101台以上保有の事業者では「影響がない」が0%、「あまり影響がない」が23・8%と圧倒的に少なく、逆に「影響がある」が42・9%と多く、大手ほど再委託の活用が多く、規制の影響を懸念していることがわかった。
【3つの方向性を提示】
同調査では、多重下請けの一律的な次数制限は、北海道では問題があることを示唆し、3つの方向性を示した。
まずは、「北海道の地域特性を踏まえた次数制限への対応」。広域輸送や季節波動、本州間ではフェリー輸送が発生するなどの特性があることから、多重下請け構造が輸送力の維持に一定の役割を果たしていることを示唆し、「北海道の輸送力を低下させることのない、現実的な対応」を検討すべきとしている。
2つ目は「再委託の効率化に向けた取り組みの促進」。北海道ではあまり活用されていないマッチングサービス(求荷・求車システム)について、北海道に特化したプラットフォームの構築や、既存サービスの更なる普及促進などを進めるよう指摘。
3つ目は「道内物流の輸送効率化に向けた取り組みの推進」。とりわけ、「高速道路料金の引き下げ」「高規格道路ネットワークの整備」を求めた。